グローバル人財の発掘の仕方/生かし方[11/10/06]

日立ソリューションズ 主催 「ヒューマンキャピタル研究会」Vol.19
人事/労務リーダーの皆様による、情報交換会2011
第2回 「グローバル人財の発掘の仕方/生かし方」
~グローバル人財とは?グローバル人財はどこにいるのか?~

日 時 2011年10月6日
参加者 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 5名
主 催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
2008年7月より開催している日立ソリューションズ主催の「ヒューマンキャピタル研究会」2011年度は、企業にイノベーションをもたらす ”攻め”の人事/労務を目指し、全5回に渡り、勉強会を開催いたします。10月6日に開催した研究会では、「グローバル人財の発掘の仕方/生かし方」をテーマのもと、議論しました。その模様を本レポートにてお伝えいたします。
◆グローバル人財育成のゴールは
 「グローバル人財」の育成は、日本企業の多くが今、大きなテーマとしている。海外市場に乗り出し、急ピッチでグローバル事業を展開するグローバル企業の多くは、当然のことながら、即戦力として活躍できる「グローバル人財」の育成強化が急務だ。しかし、それだけでなく、海外との取引が少ない、どちらと言えばドメスティックな企業でさえ、「グローバル人財」の育成を重要なテーマに掲げている。グローバル人財の育成とは、国内のビジネスとは異なるタスクを担う人財を、全社員の中から発掘して育成することなのか、あるいは、すべての人財に対し、グローバル化を促進することなのだろうか。前者の場合、国内のビジネスとは異なるグローバルビジネスのタスクとは何なのか、そして、そのタスクを遂行できるグローバル人財がどれくらい必要なのか、目標が設定されるべきである。

研究会参加企業の多くが、既にグローバルで事業を展開しているか、これから海外のビジネス比率を高めることを経営方針としている企業だが、グローバル人財の育成目標を明確にしている企業は少数であった。

ある企業では、グローバル人財を、マネジメントのレベルで分類して定義し、そのレベルごとに目標育成人数を設定し、中期経営計画に盛り込んでいた。

ただ、ほとんどの企業は、年間で全社員の1割に当たる数百名に海外研修を受けさせる、若年層社員全員にTOEICの点数目標を設定するなど、教育目標を設定しているレベルが現状であった。

◆グローバルなビジネスで仕事はどう変わるのか
 それでは、グローバルビジネスで、タスクはどう変わるのか。グローバルビジネス特有のタスクとして共通するのが以下のような要素だ。・英語やその他の外国語でコミュニケーションをとる
・異文化の人財と価値観を共有しながらプロジェクトを進める
・必然的に国内に比べて、日常のコミュニケーション、マネジメントの難易度が高くなる海外と取引したり、外国人をマネジメントしたり場合、ビジネスプロセスそのものが大きく異なるわけではないが、コミュニケーションやマネジメントの難易度は確実に高まる。それでは、そのようなタスクを遂行できる人財に求められる要件は明確になっているのだろうか。参加各社に、グローバル人財の要件が明確になっているか聞いたアンケート結果が、以下のグラフである。
 
【図1】グローバル人財に求められる要件が明確になっているか
◆グローバル人財に求められる要件は
 アンケートの結果では、「明確な定義はないが、グローバルで実際に活躍している人財に共通する人財像など、暗黙知としての要件はある」とする回答がもっとも多かった。その要件とは何か、実際に参加者に聞いてみたところ、以下のようなキーワードが挙がった。●スキル
・語学力
・マネジメントスキル
・コミュニケーションスキル
・生活適応能力●資質
・ハングリー精神
・目標達成意欲
・自ら成長できる力
・異文化理解力●経験
・海外渡航
・海外勤務

スキルに関して言えば、前述のように、グローバルでビジネスプロセスそのものが大きく異なるわけではなく、基本的なビジネススキル、業務スキルは同じと考えていい。その他の要素も、項目としては、同じだが、グローバルなタスクでは難易度が増すため、求められる質が異なってくる。

 
【図2】グローバル人財に求められるスキル
 そして、それらのスキルを生み出すものが、「資質」と「経験」と言えるのではないだろうか。
 
【図3】資質、スキル、経験の関係
 これらのキーワードだけを見ると、語学力や海外の経験を除いて、新卒採用時に求める優秀な人物像とあまり変わらないように感じる。資質面では、国内と比べると、異文化が混ざり合った環境であるため、互いを理解する力が必要であるが、理解するだけでなく、推し進めるタフな精神力が求められると、外資系企業の参加者は語る。また、グローバルといえば切り離せない語学力については、後天的に身につけられるスキルであるため、あまり重視していない。それよりも話せないコンプレックスを乗り越える力の方が重要であると、参加者の多くは語る。

こういう議論を聞いていると、いっそうリーダーとしての「優れた人財像」に見えてくる。ビジネスがグローバルであるかどうかに関わらず、グローバル人財とは、これからのすべての人財像に求める要素なのであろうか。

理想論としてはYESであるが、現実的には難しい。新卒採用でも、そのような人財ばかり採用することは不可能だ。しかも、タフにコミュニケーションを押し通せる人財は、国内では、しばしば異端の存在のように見られることがある。尖がった人財ばかりでは、立ちゆかないのも現実だ。逆に、国内では尖がり過ぎて、「協調性がない」と、あまり評価されない人財が、海外に赴任した途端に成果を出すケースもある。

研究会の中でも、「日本語での面接の様子を見ていると、とても不安を感じた人財が、英語でのプレゼンテーションを見ると、非常に堂々としていたのを見て、評価を見直した。」と話す参加者もいた。

グローバルなビジネスを進めていくうえでは、このような要件でエッジの立った人財が必要であり、また、グローバルな環境ゆえに活躍できる人財というのもあるのだろう。

◆グローバル人財の要件を見える化できるか
 そういう意味でも、グローバル人財足る人財を、社内から発掘することが重要だ。しかし、課題は、そのようなポテンシャルを持った人財をいかに発掘していくかだ。今、大手企業の間では、グローバル人財の発掘に限らず、重要な経営資源である人財の価値を見える化するために、人財データベースを整備しようとする動きが多くなっている。スキルや実績、人事考課に加えて、定性的なプロフィール情報もデータベース化し、教育や適正配置、評価に活かそうという考え方だ。

本研究会でも、人財データベースを使って、いかにグローバル人財を発掘するかが議論となった。グローバル人財に求められる要件のキーワードの中で、経験はもっとも明確に見える化できる項目だ。スキルのうち、語学力もTOEICなど試験の点数である程度見える化できるし、人事考課に直接結びつくところでは、マネジメントスキルも見える化できる。

しかし、資質面は難しい。マネジメントの現場では、人財の定性的な面が把握されているが、主観的で抽象的なものだ。資質に対して定量的な指標を設けることも考えられるが、実際には定量化は困難である。

研究会で現実的なアプローチとして議論されたのは、海外研修や海外勤務といった経験を通して、資質やスキルをアセスメントすることであった。海外の経験は、直接スキルの向上を促すだけでなく、経験によってスキルのアセスメントのデータを残すことができる。これが資質やスキルの評価につながり、蓄積されたデータによって、将来的には、資質やスキルを定量的に指標化することも可能になるかもしれない。

グローバルとは、そもそも球状を指すコトバであり、「地球規模」という意味合いだ。オーバーシーズ(海外)とは厳密に異なる。つまり、グローバルビジネスとは、国内か海外かを意識することなく、すべてを地球規模で考えることである。将来的には、グローバル人財とは、仕事によってことさら区別することなく、すべての人財に求められる要件になるだろう。しかし、今しばらくの間は、「日本の枠を飛び出したタイプの人財」として、新しい人財モデルをつくっていくことが必要になるだろう。

(文責:株式会社ナレッジサイン 藤原由佳)

●これまでのヒューマンキャピタル研究会の内容を詳細なレポートにしています。以下をご覧ください。

◆総括レポート PART1 「適正な労働時間管理を実施するために」(2008年12月1日発表)
◆総括レポート PART2 「メンタルヘルス対策への効果的な取り組みとは」(2009年3月10日発表)
◆2008年度総括レポート 「企業価値向上に向けた人事/労務リーダーの取り組み」(2009年6月1日発表)
◆2009年度総括レポート 「2010年の人事/労務における重点課題はどう変わるか」(2010年5月26日発表)
◆緊急調査レポート「東日本大震災 そのとき人事/労務はどう動いたか、そして今後人事/労務が対応すべきこととは」
(2011年6月22日発表)

◆2010年度総括レポート「人財価値(パフォーマンス)を最大化し、企業イノベーションの旗手となる”攻め”の人事/労務のミッションとは」(2011年7月14日発表)

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