改正労働基準法のポイントと運用における取り組み[09/06/11]

日立ソリューションズ(旧 日立システムアンドサービス)主催
人事/労務管理リーダーのための「ヒューマンキャピタル研究会」第7回

「改正労働基準法のポイントと運用における人事の取り組み」
~有給休暇制度の効果的運用・時間外労働縮減とワークライフバランス実現のために~

ワークショップ 人事/労務管理リーダーのための「ヒューマンキャピタル研究会」
日 時 2009年6月11日
参加者 企業の人事/労務管理担当者6社8名
主 催 株式会社日立システムアンドサービス
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 日立システムアンドサービスでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、昨年7月より、定期的に開催しております。

本年度第1回となる今回の研究会では、2010年4月1日より施行される「労働基準法の一部を改正する法律」について、ディスカッションをいたしました。

改正労働基準法によって、人事/労務業務はどう変わるのか。また、このたびの法改正を、長時間労働縮減や、ワークライフバランス実現といった人事課題の解決にどのように活用していくのか。研究会での議論の一部をご紹介いたします。
※次回のヒューマンキャピタル研究会の詳細はこちら

◆改正労働基準法のポイント
 2010年度より施行される改正労働基準法の主なポイントは、以下の3点である。
(厚生労働省『リーフレット「労働基準法の一部改正法が成立~平成22年4月1日から施行されます~」)

(1)月60時間超の時間外労働に関する割増賃金率を50%以上と義務付ける
(2)月45時間超の時間外労働の割増賃金率を法定の25%から引き上げる努力義務が課される
(3)労使協定を結ぶことで、年5日までの年次有給休暇を時間単位で取得することが可能となる

このうち、(1)については、中小企業への適用は当分の間はなされないとのことだが、(2)(3)についてはすべての企業が対象となる。

また(1)については、労使で協定を結ぶことにより、通常の時間外労働に対する割増賃金率との差額を、有給休暇として付与することも可能とされている。

たとえば、月76時間の時間外労働があった場合を考えよう。60時間を越えている16時間分の割増率は50%以上となるため、通常の割増率が25%だとすると50%-25%=25%分を加えて支払わなければならない。この25%×16時間=4時間分を、有給休暇として付与することも可能ということになる。

◆有給休暇の代償付与「導入しない」が多数
 研究会では、まずこの有給休暇の代償付与について、各社の考えを聞いた。結論としては、現在この制度の導入を考えている企業はおらず、多くの企業が「導入をしない方向で話を進めている」とのことであった。

そもそも、「月に60時間以上も残業せざるを得ない多忙な従業員に有給休暇を付与したところで、結局休みが取れないのではないか」というのが、そう考える第一の理由だ。

もちろん、この有給休暇は、あくまで割増分の「代償」として付与されたものであるため、実際に有休が取得されなかった場合には、割増分は賃金で支払われることになる。従業員にとって、代償付与された休暇が取れないことで、損をすることはないものの、「長時間残業で疲れた従業員に休養を取らせる」という、制度導入の本来の目的を達成できないのであれば、その意義も薄れざるを得ない。

また、代償休暇を実運用するにあたっては、厚生労働省から発行されている同リーフレットによると「半日単位などまとまった単位で付与することが考えられる」と言う。「詳細は改正法の施行までに・・・厚生労働省令で定められる」ともあり、現時点では明確になっていないところもあるが、仮に半日、1日といったまとまった単位での取得になるとしよう。

すると、たとえば1日分の休暇となるまでには、少なくとも月80時間ほどの残業が必要ということになる。その月のうちに半日分、1日分に達しなかった場合には翌月に繰り越す、といった運用をするとなると、計算や管理も複雑なものとなり、導入の負担は決して少なくないことが予想されるだろう。

有給休暇付与の是非の前に、「そもそも月にそれだけの時間外労働があること自体が大きな問題だ」(研究会参加企業)と捉え、多くの企業が長時間労働の縮減に取り組んでいるというのが実態のようだ。

◆時間単位での年次有給休暇取得のメリット/デメリット
 (3)の時間単位での年次有給休暇取得についてはどうだろうか。これについては、研究会参加者の中でも意見が分かれる【図1】。

「導入を積極的に考えている」というある企業では、時間単位での年休取得が可能となることで、「たとえば、朝1時間だけ定時から遅れて出勤することができるなど、育児や介護をする者にとって、より弾力性の高い就業環境が実現できる」と考えており、実際、そうしたニーズに対する従業員からの要望も大きいとのことであった。いわば、時間単位での年休取得をフレックスタイム制度の代用として使うイメージだ。

逆に言えば、既にフレックスタイム制度がある企業にとっては、そうした意味では必要がない制度だということになる。「デメリットが大きいと思われるので、できれば導入は避けたい」と回答していたある企業は「既にあるフレックスタイム制度と、運用上それほど差異がないのに、管理だけ非常に煩雑になってしまう」と、そのデメリットを指摘している。

【図1】

導入のデメリットとしては「時間単位での取得が可能となることで、半日単位、1日単位でのまとまった休暇が、気兼ねなく取りづらくなるのではないか」と懸念する声もあった。一方で「日単位での運用が本来の主旨に合うとは思うが、有休取得率の改善が進まない以上、積極的に取り入れる方が望ましい」(研究会参加者)と考え、制度導入に一定のメリットを認める企業もあった。この点については、その企業の風土や文化によるところが大きいだろう。

◆長時間労働を削減し、ワークライフバランスを実現するために
 今回の法律改正の背景には、「長時間労働の抑制」や、「仕事と生活の調和」といった狙いがあるとされる。

確かに、月60時間超の割増率をあげることは、企業の長時間労働削減への意欲向上に繋がるだろう。ただ、実際に長時間労働を削減していくためには、現場マネジメントの強化や、業務生産性向上などの具体的な施策が欠かせない。そこで、研究会に参加していた企業でも様々な取り組みがなされていた。

ある企業では、マネジメント層の評価に「残業時間をどれだけ削減できたか」を指標として盛り込み、給与に反映させていた。これは下手をすると、残業時間が隠され、サービス化してしまう恐れもあるが、企業として「残業時間が少ないチームのマネージャーを、高い生産性のタスクマネジメントができる優秀なマネージャーとして評価する」という、非常に明確なメッセージにもなる。労働時間を削減しようとすると、多くの場合、一時的な業績の低下が伴うため、マネージャーは取り組みに二の足を踏んでしまいがちだが、それを避ける上でも効果的だろう。

また、別のある企業では、マネージャーの数を増やし、少人数のチームを多数作ることで、マネジメントの負荷を減少させていた。これにより、部下1人1人の業務をより把握しやすくなり、業務の生産性を向上することができたと言う。

「仕事と生活の調和」についてはどうか。

このたびの法改正により、時間単位での年次有給休暇の取得が可能となった。この制度を上手く活用すれば、企業によっては、先に見たように、たとえば、育児や介護をしながらも仕事がしやすい就業環境を提供したり、多様な働き方ができる職場にすることができるかもしれない。

一方、柔軟な就業環境の恩恵を受ける従業員が偏ってしまうのではないかとの懸念もあった。同じ「時間単位での年休を取得する」という局面であっても、ワークライフバランスを享受できる従業員とそうでない従業員とが出てきてしまったり、その格差が大きくなってしまっては問題だ。

一人一人の従業員が皆、「ワークライフバランス」を実現できるようにするためには、柔軟な就業スタイルを公平に享受できるための運用の工夫が必要となるだろう。

(文責:株式会社ナレッジサイン 森 天都平)
※株式会社日立システムアンドサービスは、2010年10月1日付けの合併により、株式会社日立ソリューションズとして新たにスタートしました。
本レポートは2010年10月1日以前に公開されたもののため、レポート本文中の社名(日立システム)は当時のものとなっております。

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