導入事例

グループ人事戦略を考える[12/12/12]

日立ソリューションズ 主催「ヒューマンキャピタル研究会2012」~HRイノベーターへの変革~ Vol.26
グループ人事戦略を考える
「グループ管理、シェアード化、制度共通化などをいかに進めるか」

日 時 2012年12月 12日
参加者 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャの方 11社
主 催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸
2008年7月より開催している日立ソリューションズ主催の「ヒューマンキャピタル研究会」、2012年度は、「HRイノベーターへの変革」をキーワードに全5回に渡り開催しております。
2012年12月12日に開催した第4回の研究会では、グループ人事戦略について議論しました。その模様を本レポートにてお伝えいたします。


※最新のヒューマンキャピタル研究会の開催概要はこちらをご覧ください。


◆活発化をめざすグループを横断した人事ローテーション
今回、グループ人事戦略という視点で、一番注力している人事施策は何かをアンケートで参加者に聞いた結果が【図1】である。この中でもっとも多い回答が「グループを横断した人事ローテーション」であった。
【図1】グループ人事施策でもっとも注力していること
この人事ローテーションとは、どのような階層の人財をどのようなレベルでローテーションさせることなのか。参加者の多くは大きく2つのパターンを想定している。
1つは、5年目ぐらいまでの若手を対象とした育成目的のローテーションで、もう1つは、部長以上クラスを対象としたグループを横断した最適ポジションへの配置であった。
若手にさまざまな業務を経験させることは育成の観点から効果的とされ、これまでも積極的に実施されてきた。ただ、日本企業において機能別に分社化が進んだことで、これまでは社内の人事異動であったものが、会社間の異動になり、これまでのように簡単にはいかなくなっている。その反省から、具体的には出向という形になるが、会社間の異動によって再びさまざまな業務経験を持たせようとする動きだ。
一方、部長以上については、特にグローバルに事業を展開する企業においては、グローバル規模での最適ポジションへの配置ということが重要課題になってきている。部長以上の会社間の異動を促進しようとすると、ある程度処遇制度を統一することが必要になってくる。アンケートの回答で「職能資格、職務グレードなどの概念統一」の回答が多いのは、主に部長以上の「グループを横断した人事ローテーション」という目的に必要な環境と言える。
◆シェアードサービスセンターで属人化する業務ノウハウ
注力する人事施策として、「グループを横断した人事ローテーション」と同様に多い回答が、「給与計算など人事業務の集約化/シェアード化」である。今回の研究会では、グループ内にシェアードサービスセンターを持ち、業務を委託している企業、あるいはシェアードサービスセンターとして業務を受託している企業の両方が参加し、互いの立場で有益なナレッジが共有された。
シェアードサービス化を運用していくうえで課題となるのが、「人財の不足」と「業務の切り分け」だ。
シェアードサービス化では、主にオペレーショナルで標準化が可能な業務をシェアードサービスセンターに切り出し、運用していくわけだが、実際には、シェアードサービスセンターのスタッフの属人的なスキルに依存する部分が大きい。
10年前に実際にシェアードサービスセンターを立ち上げた経験のある参加者によると、立ち上げの最初は業務の切り分けも手順も明確化していないことが多く、委託側の本社人事部とシェアードサービスセンター側でひとつひとつ相談しながら業務を進めていった。イレギュラーな対応も多く、徐々にスタッフの熟練によって運用が適正化されるが、多くのノウハウは明文化されておらず、人にノウハウが属する形となっている。
さらにシェアードサービスセンター内でも、業務ごとにタテ割りの組織になっており、サービス品質が向上することに比例して、業務ノウハウはいっそう人に属する状態になっていく。属人的なノウハウを持つ人財が増えること自体は、ある意味シェアードサービス会社の差別化要因にもなり得るが、人財の確保・育成という点では制約になる。
◆シェアードサービス化におけるシェアード業務の切り分け
同様に、どこまでを委託業務範囲とするのか、簡単には線引きできない。サービス受託という意味では、サービス範囲は限定されるわけだが、委託先を対顧客という視点で見ると、さまざまな要望に応える必要も生じてくる。線引きした本来の受託業務からはずれた要望も多いが、それをはねつけるわけにもいかない。グレーな部分を取り込む融通が効くこともサービス品質の1つになる。
線引きの基準の1つとして「判断を伴うものかどうか」という基準がある。しかし、シェアードサービス化が進み、業務ノウハウがシェアードサービスセンター側に集中している場合、実際にはシェアードサービスセンターの方が適切な判断ができることが多い。
実際の現場では、「この場合、こういう判断になるはずですが、念のため本社の人事部長にご確認ください。」という対応が多くなる。
ただ、効率化という点では、やはり業務を標準化することが必要になる。シェアード化の初期段階では、受託範囲外のタスクや、オーバーラップするタスクが多いが、経験を積み重ねることで整理され、標準としての領域が明確になってくる。そこで改めて標準サービスを定義して、切り分けを行う。最初から標準業務を定義して明確な切り分けを行うのは難しく、運用の中で再定義していく方が現実的なやり方のようだ。
◆シェアードサービス業務の標準化というプロジェクト
 一方で、人事業務の標準化は、人事の標準システムの構築プロジェクトという側面があり、これに関わる人財には、プロジェクトマネジメントの力が求められる。業務フローを定義し、システムの要件に落とし込んでプロジェクトを推進できる人財が必要になるのだ。このプロジェクトリーダー人財の確保に各社苦労している。
IT部門で人事業務を理解する人財を活用して成功した企業もあれば、それが裏目に出た企業もある。
標準業務のあり方の絵を描くのは誰がいいのか。
研究会に参加したシェアードサービス会社の多くは、制度コンサルティング的な立場も担っており、標準業務、標準システムの設計にあたっている。本社人事で業務ノウハウが空洞化し、シェアードサービス会社に業務ノウハウが集中しているケースでは、シェアードサービス会社が、制度を設計し、プロジェクトを推進する立場にふさわしい。
業務を標準化するには、複雑な制度をシンプルにしていかなければならない。しかし、ほとんどの場合、もっとも複雑なのは親会社の制度である。一方で複雑な親会社の制度に合わせようとすると、グループ各社にとっては、人件費がアップするなど、身の丈以上の制度を抱えてしまうことになる。これでは標準化にはならない。
多くの企業では、複雑化した人事制度をシンプルにしようと考えている。業務の集約化の面もそうであるが、グローバルでの人事施策を考えたとき、複雑な制度が人事ローテーションの足枷にもなるからだ。
◆標準業務の設計とガバナンス
 標準業務の絵を描くのはシェアードサービス会社であっても、グループに対してシェアード化の号令をかけてガバナンスを効かせるのは本社の役割である。しかし、シェアードサービス会社をつくり、標準の業務、システムはつくるが、シェアードサービスを使うかどうかはグループ各社にまかせる、という会社も多い。その場合、シェアードサービス化をどこまで展開できるかは、シェアードサービス会社が一生懸命グループ各社に営業して、顧客を獲得できるかどうかに負うことになる。ガバナンスを効かせる役割が実質的にシェアードサービス会社になっているのだ。
ここが、シェアードサービス化の特徴的な課題である。標準業務を運用する主体が、収益企業としての一面を持つことで、グループとしての方向性・ガバナンスの責任が逆に曖昧になってしまうのだ。
当初、グループ人事戦略の議論を、制度面と業務面に切り分けて議論しようと試みたが、両者は同時に考えるべきことであることに気づく。グループとしての統一的な動き、機敏な動きのためには、制度もある程度の共通化が必要で、制度が共通化してくると、必然的に業務も共通化してくる。業務効率化のためには集約化が必要で、集約化の設計をすることで制度の無駄も見えてくる。グループ人事戦略というベクトルのもと、制度と業務を一体で改革していくことが必要であろう。
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)

※最新のヒューマンキャピタル研究会の開催概要はこちらをご覧ください。


●これまでのヒューマンキャピタル研究会の内容を詳細なレポートにしています。以下をご覧ください。

◆総括レポート PART1 「適正な労働時間管理を実施するために」(2008年12月1日発表)
◆総括レポート PART2 「メンタルヘルス対策への効果的な取り組みとは」(2009年3月10日発表)
◆2008年度総括レポート 「企業価値向上に向けた人事/労務リーダーの取り組み」(2009年6月1日発表)
◆2009年度総括レポート 「2010年の人事/労務における重点課題はどう変わるか」(2010年5月26日発表)
◆緊急調査レポート「東日本大震災 そのとき人事/労務はどう動いたか、そして今後人事/労務が対応すべきこととは」
(2011年6月22日発表)

◆2010年度総括レポート「人財価値(パフォーマンス)を最大化し、企業イノベーションの旗手となる”攻め”の人事/労務のミッションとは」(2011年7月14日発表)
◆2011年度総括レポート「変わりゆく人事/労務リーダーのミッション」(2012年6月6日発表)

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