クラウドでシステム構築のスピードはアップできるか 東京編[10/07/15]

【TIS主催】 次世代のIT運用を考える研究会
~持つものと持たざるものの最適なIT運用とは~
第1回 クラウドの活用でシステム構築はどれだけスピードアップできるか 東京開催から
~サーバ統合とITのオフバランス化が進む次世代IT運用の姿~

日 時 2010年7月15日
参加者 次世代のIT運用について考える企業の情報システム部門リーダー5名
主 催 TIS株式会社
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 TISでは、企業のCIO/情報システム部長が、今後のIT運用の体制についてディスカッションする『次世代のIT運用を考える研究会』を発足いたしました。

これからの情報システム部門は、自社内にあるシステム資産、IT人材を有効に活用していくとともに、場合によっては、クラウドやITアウトソースなど、社外からのリソースも積極的に用いることで、最適なバランスでのIT運用体制を構築していく必要があります。

持つものと、持たざるものが最適なバランスのIT運用体制とはどのようなものか。さまざまなIT技術の進化を睨みながら、自社にとって最適なIT運用体制を考えていくために、各社の「今後のIT運用体制」への考え方を共有していきます。

今回の研究会では、仮想化によるサーバ統合の事例や、ITのオフバランス化を進める企業の事例などが共有されました。これらの議論から、次世代のIT運用の姿を探りたいと思います。

◆仮想化によるサーバ統合の課題は統合ステップと運用に変化
 ナレッジサインが初めて「仮想化」をテーマとしたワークショップのファシリテーションを手がけたのが2008年の2月である。それから約2年半。ITの世界において2年半という時間は、一つの常識が塗り替わるのに十分な時間ではあるが、企業の仮想化への取組みには当時とは隔世の感があることを改めて感じた。

2008年2月ごろでは、仮想化は企業の一部のシステムにしか導入されていなかった。また、仮想化を語るうえでの課題のメインは、仮想化技術そのものに対する信頼性であり、それを裏打ちするかのように、ハードメーカーや、ミドルウェア/アプリケーションベンダーが仮想化マシンをサポートしないことによる不安であった。

今や仮想化によって全社的にサーバを統合することは特別なことではなくなってきている。先進的な企業の事例によって仮想化技術への信頼性は高まり、ベンダーのサポート体制よりも速いスピードで、ユーザ企業の取組みが先行している形だ。

今現在の仮想化によるサーバ統合の課題は、どのようなステップで統合していくか、という具体的な方法論に変化している。そして、仮想化導入後の運用である。

今回研究会に参加したある製造業では、グループ全体のIAサーバ約800台を仮想化で統合するプロジェクトが進んでいる。この企業では、仮想化に対する取組みは比較的早く、2004年には試験的な仮想化を導入していた。そして、2008年から本格的な仮想化に着手し、最終的には物理台数は今の10分の1程度になる見込みだ。

この企業でも、仮想化ソフトウェアに関する知識習得が新たに必要になったことを挙げている。これまでの本研究会の議論でも、多くの仮想化導入企業が、仮想化導入によって仮想化という技術分野の運用ノウハウが新たに必要になってきたことと、ガバナンスの側面での運用ノウハウが必要になってきたことを新たな課題に挙げている。

仮想化導入に伴って、ITインフラの調達スピードは確実に速まったわけだが、同時に簡単に環境が構築できるため、気がつくとゲストサーバがどんどんと増え、物理サーバが足りなくなってしまうということが発生する。

仮想化によるサーバ統合を機に、ユーザ部門がカフェテリア方式で簡単に仮想サーバを調達できる環境を用意することが多いが、サーバ調達のルールを徹底したり、ユーザ権限を制限するなどしないと、統合のための環境が、逆に物理的な台数を増やす要因になりかねないのだ。

◆ITのオフバランス化
 本研究会に参加していた他の企業では、基本的にIT資産のオフバランス化をめざしていた。自社でIT資産を持たず、運用もアウトソースする。

自社のIT部門は、内部統制業務に特化し、高いパフォーマンスが要求されるシステムや認証システム、監視システムはハウジングし、それ以外のシステムはすべてパブリッククラウドに載せてもいいというドラスティックな発想を持っている。

前述の製造業でも、グループ内のIT資産はすべてグループ内IT事業会社の資産として、グループ会社はサービスとしてITを利用する体制だ。

このように、多くの企業が、基本的にITのオフバランス化を指向している。

仮想化のようにリソースを効率利用する技術を軸として、ITはオフバランス化し、サービス利用する。これが次世代IT運用の一つの姿であるとすれば、サービス利用という意味でのクラウドサービスと重なってくる。

◆エンタープライズクラウドが実現するもの
 前述の事例の製造業では、システム事業会社がグループに対してITをサービス提供しており、プライベートクラウドと言える。サービスモデルとしては、サービス提供者がグループ内企業であっても、外部のクラウドサービス事業者であっても同じように見える。

しかしながら、グループ内かグループ外かで決定的に違うのは、データに関するセキュリティのポリシーの問題だ。今回同じテーマで大阪でも研究会を開催したが、これが外部クラウドサービスを使う場合のもっとも大きなネックとされていた。

この企業では、基本的に基幹系と言われるシステムはプライベートクラウドの対象となっていない。では、セキュリティ上重要なデータとは何か。この企業の場合、外部のクラウドを利用する場合、認証行為のために、社員データを一時的に外に出さないといけないことを具体例として挙げていた。

たしかに、パブリッククラウドを利用する場合この懸念は重要だ。しかし、エンタープライズクラウドの場合、企業内のイントラネットに直接つなぐことが可能なので、この懸念は払しょくできると、TISのIT基盤サービス事業部主査の内藤稔氏は述べている。

ここで、エンタープライズクラウドの定義について触れておきたい。

 
 本研究会の主催者であるTISでは、エンタープライズクラウドの定義を

1.資産を持たずにサービス利用する
2.サーバの所在が明確(国内)
3.プラットフォーム、ミドルウェアはある程度クラウド事業者の制約を受ける
4.リソースは共有するが、論理的に独立した領域を確保する
5.企業のプライベートネットワークと接続できる
としている。

つまり、パブリッククラウドとプライベートクラウドとの中間的な要素を持つものであるということだ。しかし、どうもパブリッククラウドやプライベートクラウドとの違いがわかりにくい。

そこで私は、このように独自な解釈をしている。

システム開発において、過去の開発プログラム資産をコンポーネント化して、開発を効率化するという考え方がある。これを基盤構築に応用したものというのが私の解釈だ。

TISのようなSIerはこれまでも一から企業固有のIT基盤を構築することをやってきている。IT基盤を構築する方法論の一つとして、基盤構築の際に、その多くは既に用意されているパッケージを使用し、用意されたパッケージが合わない部分は、新規に構築するというやり方が可能だということだ。結果としては、企業の要望に応じた固有性の高い基盤を構築することができるが、その中身では、既存の資産が活かされている。こういう解釈だ。

クラウドサービス事業者にとって、既存の資産を活用できる領域が多ければ、ビジネスとして規模のメリットを生かせるし、新たに構築する領域が多ければ、従来のSIと変わらないビジネスモデルになるということだと思っている。

そう考えると、企業にとっては、自社の資産と外部サービスを組み合わせる場合に、標準化されたサービスと、カスタマイズされたサービスを組み合わせることができ、さらに選択肢が広がることになる。そのように、さまざまな選択肢をうまく組み合わせることが、次世代のIT運用をしていくうえでの鍵となるだろう。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)
 
●TISが提供するクラウドサービス『TIS Enterprise Ondemand Service』の詳しいサービス内容はこちらをご覧ください

●2009年度に開催した「次世代IT基盤のロードマップを考える研究会」の総括レポートについてはこちらをご覧ください


●2009年度開催の「次世代IT基盤のロードマップを考える研究会」各会の内容は以下をご覧ください。
第1回 クラウド新時代に企業はどんなベネフィットを享受できるか「”持たないIT”がもたらす企業価値を考える」
第2回 クラウド新時代を見据えた自社IT基盤の課題を考える
第3回 「いち早く取り組む企業に学ぶ次世代のIT基盤の考え方」
第4回 「~IT基盤再整備どこまで手をつけますか?~IT基盤再整備のスコープを考える」
大阪編 「いち早く取り組む企業に学ぶ次世代のIT基盤の考え方」
第5回 研究会総括 自社にとって最適なIT基盤再整備ロードマップのつくり方

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