第3回 小さな一歩が踏み出せるITSS導入の5つの鍵[09/11/16]

【ITスキル研究フォーラム主催】 ITSS推進ワークショップ
第3回 「小さな一歩が踏み出せるITSS導入5つの鍵
~As-Isから始めるスモールスタートが活用につながる~」

日 時 2009年11月16日
参加者 企業の人材開発部門の方 4社4名
主催・運営 ITスキル研究フォーラム
事務局 株式会社日経BPマーケティング
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 ITスキル研究フォーラムでは、2009年6月より、ITSSの導入を検討している企業様やITSSを実際に導入している企業様を対象に、ITSS導入のノウハウやITSSを有効に活用するノウハウのなどを意見交換するワークショップを定期的に開催しています。第3回となる今回のワークショップでは、ITSSの導入を検討している企業を対象に、ITSS導入のスモールスタート(現実的なスタート)にむけての具体的な議論が繰り広げられました。本レポートでは、当日交わされた各社の実際の取り組みや、ISRFからの具体的ナレッジを報告いたします。
◆既存のITSS職種に自社独自の職種をどう対応させるか
 第3回目となる今回のテーマは「小さな一歩が踏み出せるITSS導入5つの鍵」です。
過去2回の議論を通して、皆様ITSSの導入には積極的なものの、導入を実現するまでには、さまざまな課題、ハードルがあることがわかりました。
と同時に、あるべき理想の姿をゴールに描き、実現するためのベストプランを構築しようと考えるあまり作業項目が多すぎて導入できない。あるいは導入したものの、実施項目を詰め込み過ぎ、現状把握が不十分で潤滑に運用できないケースを多々見受けます。そして、本来行うべき人材育成そのものが停滞してしまっている企業様が多いこともわかりました。そこで、今回は、現状把握をもとに現実的なゴール設定をして1歩を踏み出す『スモールスタート』のためには何が必要か、を議論いたしました。ワークショップの議論に先だって、ISRFより、ITSS導入において、重要な「5つ鍵」というキーワードが紹介されました。
① 導入目的の周知
② 職種に対する自社の方針決定
③ 人材育成方針としてのTo-Beモデル策定
④ 上司との面談の実施
⑤ 自社に必要な研修体系の構築

そして、項目ごとに、To-Beを描く理想的なアクションモデルと対比し、As-Isから始める現実的なアクションモデルが紹介されました。

① 導入目的の周知
全社員へ説明会実施⇒管理職に対する説明会の実施
② 職種に対する自社の方針決定
未定義職種の設定、スキル診断における自社独自設問の作成⇒ITSS標準のフレームワークを利用
③ 人材育成方針としてのTo-Beモデル策定
戦略的人材育成のあるべきゴールを設定⇒スキルマップをもとに全国平均との比較から底上げすべき部分を最初のゴールに設定
④ 上司との面談の実施
スキルの現状による人材育成と人事考課への連動⇒スキル診断結果をもとにした上司との面談による目標のすり合わせ
⑤ 自社に必要な研修体系の構築
研修ロードマップ、キャリアパス構築の策定⇒重点育成職種・スキル項目にフォーカスした研修コース情報の整備

今回のワークショップでは、各社にとっての「As-Isから始めるスモールスタートはどのようなものがよいか」、「小さな一歩が踏み出せるITSS導入『5つの鍵』を具体的にどのように進めるべきか」について、互いに知恵を出し合って議論しました。

今回のワークショップに参加された企業様の課題をお聞きすると、スモールスタートに向けて大きく2つの課題が見えてきました。
1. ITSSの職種定義と自社の実際の職種をどう適応させるか
2. ITSS診断結果をどのようにフィードバックするか

◆ITSSの職種定義と自社の実際の職種をどう適応させるか
~自社独自の職種にあてはめるために~
 いざ、自社にITSSを導入しようとした場合、自社の職種が、ITSSが定義している11職種・35種類の専門分野とピッタリ一致しないことがあります。ワークショップでも、その対応策に頭を悩ませている企業様がいました。このような状況は多くの企業に当てはまります。特定の業務に特化した特殊なスキルが必要である社員、技術的に専門のスキルが求められている社員など、各企業で固有性の高い業務を既存のITSS職種にあてはめることは難しいのです。今回のテーマである「スモールスタート」の視点に立つと、既存のITSS職種に当てはまる社員からひとまず実施していくという解決策がまずあります。しかし、ITSS導入の目的として、全社的な育成計画策定のために全社員のスキルレベルの把握が必要な場合もあり、その場合、既存のITSS職種に当てはまる一部の社員のみに実施する方法論は必ずしも有効ではありません。

そこで、ISRFからの提案は、「読み替え」と「新しい職種の定義」でした。
「読み替え」とは、既存のITSS職種と自社独自の職種間の「読み替え表」を作成することで、職種対応を行う方法です。このような「読み替え」は、既にITSSを導入している企業にも多く取り入れられている手法です。

そしてもう1つの解決策として新しい職種定義をつくることです。例えば、ITSS-DSに追加設問をつくることで、既存のITSS職種と自社独自の職種を当てはめて診断することが可能です。

ITSSの職種に適応しないのは、職務の特殊性だけでなく、一人の社員が複数の業務を担っている場合もあります。ワークショップでは、このような悩みを抱えている参加企業もいました。その場合の解決法としては、現在担っている業務を「メイン業務、サブ業務、サブ2業務」といった形で、複合的に診断を実施する方法が紹介されました。

複合的診断の種類や事例は様々あるようです。例えば、「メイン業務、サブ業務、サブ2業務」以外にも、「過去に経験した職務(主に経験した中で得意なもの)、現在の職務、将来やりたい職務」という視点で複合的に診断している企業もあることが、ISRFから紹介されました。

◆診断結果を面談に生かす為には? ~フィードバックの方法について~
 スモールスタートへのもう一つの大きな課題が、ITSS診断後のフィードバックです。職種の読み替え作業や新しい職種の定義、また研修ロードマップの作成と言った作業は、人材開発部門の方々が工数をかけることで実現可能な作業ですが、フィードバックは、現場のマネージャーの協力が不可欠です。しかし、たくさんの部下の診断結果をどのように受け止め、フィードバックをし、育成に繋げていくか、その方法論に不安を抱えている現場のマネージャーは多くいます。人材開発部門としては、現場のマネージャーに、フィードバックへの協力を仰ぐことと、フィードバックしやすい環境を提供することが必要です。このような悩みを解決する一つの方法論として、「まずはフィードバックしやすい社員に対象を絞り、診断を実施する」というスモールスタートの考え方が披露されました。

その企業では、
① 会社としてぜひとも診断を実施して選抜育成したい人材
② 自ら診断に手を挙げる人材

という人材に絞ったスモールスタートを考えていました。これらの人材へのフィードバックがしやすいと考える理由は、①の「選抜育成したい人材」は、上司としても細やかなフィードバックをしたい相手でもある(上司の側からフィードバックへの不安がない)こと。そして、②の「自ら手を挙げる人材」は、自らのキャリア開発に意欲を持っているため、診断結果への受け止め方が前向きである(フィードバックされる側に不安がない)ことでした。

ワークショップに参加していた別の企業では、同じように、診断結果のフィードバックに対する現場のマネージャーの不安が、導入への大きな課題でしたが、職種の適応の側面と実際のフィードバックで出てきた反省点を次に生かすという考え方から、特定の部署に限定したスモールスタートを予定していました。

まずは社内でフィードバックの仕方の成功事例を作り、その後全社的に展開していく方法が、スモールスタートという視点では、非常に有効であると言えます。社内での成功事例があることで、マネージャーの不安が解消され、反省点を踏まえて横展開が出来ます。

また、診断後のフィードバックに関して不安を抱えている現場マネージャーへの支援策として、ITSSの診断結果を使った面談の具体的方法や、面談シートを人材開発部門から提供し、面談におけるマネージャーの負担を軽くすることが重要であるという意見がありました。

 「ITSSのアセスメントがあることによって、部下との面談の負担が増えて大変になるという発想よりは、むしろ面談材料が増えてやりやすいと感じているはずです」(ワークショップ参加企業)

といったように、ITSSの診断結果を部下との面談のひとつの材料とすることで、より良い面談の実施にも結び付けられることを、現場のマネージャーに理解させることも有効です。

今回の議論では、現実的なITSS導入に向けたスモールスタートの方法論について、具体的に明日から使えるノウハウの共有が行われました。各社の状況や目的にあったスモールスタートを切ることが、ITSS導入後の運用を成熟させ、計画的で体系的な人材育成を早期に実現する近道であると言えます。

(文責:株式会社ナレッジサイン 松本麻友香)

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