不況下で企業の活力を維持する人事政策とは[09/03/17]

日立ソリューションズ(旧 日立システムアンドサービス) Presents
「不況下で企業の活力を維持する人事政策とは」
~人事/労務リーダーがこの不況時にできること~
人事/労務管理リーダーのための「ヒューマンキャピタル研究会」Vol.6

日 時 2009年3月17日
参加者 企業の人事/労務管理担当者4社5名
主 催 株式会社日立システムアンドサービス
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 日立システムアンドサービスでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を開催しております。本年度最後となる第6回研究会のテーマは「不況下で企業の活力を維持する人事施策とは」です。この不況下において、企業の経営合理化に寄与しながらも、人材という貴重な経営資源を守り、企業の活力を維持していくためにはどうすればよいのか。人事/労務管理リーダーにできることは何か。研究会での議論の一部をご紹介いたします。
◆労働時間削減策は生産性向上とセットに
 今日の不況下において、人事部門にも制度の合理化、コスト削減施策が求められていることは言うまでもないだろう。研究会に参加していた企業でも、既に様々な取り組みを進めていた。

最も多かった施策は「時間外労働の短縮」である。時間外労働の短縮については、第2回研究会でも議論をしており、不景気であるか否かに関わらず、人事/労務リーダーが常日頃から取り組むべき重要な課題との認識であった。

ただ、不況を背景に、時間外労働短縮により積極的に施策を進めやすい側面が出てきていることも事実である。研究会に参加していた企業の中にも、具体的に10%という削減目標を掲げ、時短の取り組みを進めている企業もあった。

もちろん、単純に残業時間を減らそうとしても、「時間外労働の削減は生産性の向上とセット」でなければ、仕事の質の低下を招いたり、サービス残業となってしまう恐れがある。このため、時間外労働を短縮する場合には、後述するように、社員同士が協力をし、より効率的に仕事を進めていくための積極的な施策も、同時に打ち出す必要がある。

◆不況下でも人材への投資は継続
 今回の研究会に参加していた企業では不況対策として人員削減を実施していた企業はなかったが、新年度の採用に関しては、抑制を検討している企業が多くあった。

採用の抑制を判断するにあたっては、各社とも慎重である。来年度も予定通りの人員を採用する企業の人事/労務リーダーによれば、「基本的には人は採用し続け、育て続けていくしかない」と言う。たとえば、仮に来年度の新卒採用を抑制したとしても、数年経ち、この年に入社した新入社員が中堅層となった時に、不足分は中途採用せざるを得ないからだ。「以前、不景気に採用を抑制したことがあったが、結局、現在この層に中途採用者を入れねばならなくなっており、後に大きな影響がでてしまう」と、この人事/労務管理リーダーは述べている。

教育費用についても同様である。「人材は企業の原動力であり、そこに投資をしなければ新たなものは生まれてこない」との認識は、全参加者に共通しており、多くの企業が「教育費用の削減は考えていない」と述べている。また、中にはどうしても教育費用を削減せざるを得ないケースもあるが、そうした場合であっても、教育プログラム自体は減らさず、削減された費用分は自社で研修プログラムを内製化するなどして対応を進めているとのことであった。

◆不況下の今こそ制度の適正化のチャンス
  不況下での取り組みとして、福利厚生の見直しを行っている企業もあった。ただし、「不況だからとにかくコストを削減すべき」と考えているかと言うと、そうではない。見直しをするのは「以前と比べて、社会も社員の価値観も変わってきていることを考慮し、止めるべきものは止め、新しく始めるべきものは始めるべきだ」と最適化も同時に考えているようだ。

福利厚生の中には、制度開始時には意味があり、有効であったものの、現在の価値観・基準から見れば、支給の根拠があいまいになってきているものや、特定のライフスタイルに過度に偏っているものもあるようだ。「現在の経営環境は、こうした点を見直す良い機会」と考えることもできるのである。

ある研究会参加企業によれば、処遇制度についても見直すべき点は多いと言う。ここでの見直しとは、単純に職級や労働時間に比例した給与体系ではなく、成果に見合った給与体系に見直すということだ。透明性が高く、公平な処遇制度にすることで仕事に対する社員のモチベーションを高め企業としての競争力を強化していくことが目的である。

しかし、こうした施策を進めるためには、その制度改正が適切であることが事前に労使間で合意されていなければならない。そうでなければ、「処遇制度の見直し=単なるコスト削減施策」と思われてしまい、望んでいた成果が得られなくなってしまうからだ。せっかく施策を実行しても、「モチベーション低下によるパフォーマンス低下をまねいてしまう」ということにもなりかねない。

そうならないためにも、制度改定の前に、社員と十分にコミュニケーションを取ることが必要である。研究会に参加していた企業でも、「トップから自社の経営状態について説明をし、社員に理解してもらう」、「改定の必要性について、人事から根気強く説明を続ける」ようにしているとのことであった。

◆人事部が企業文化を変革する
 不況下で人事が取るべき施策は、単にコスト削減というネガティブなものに留まらない。不況を乗り越えるために、社員のモチベーション、パフォーマンスを高め、社員同士がこれまで以上に協力し合い、高い成果を出すことができる環境を整えることも、人事/労務部門のミッションである。多くの研究会参加企業では、人事部が主導し、こうしたポジティブな施策を推進していた。

ある企業では、新人研修で自社のPR資料を作成させており、その研修の中で、トップ層とコミュニケーションを取る機会を設けていた。「トップと新入社員とで縦の交流にもなる上に、自社の良いところについても知ることができる」ため、インナーブランドの向上にもなるという。

さらに、この企業では組織上はまったく別の部署に所属しているメンバーを集め、特定の技術に関する共同の研究会を実施するなど、事業部を横断したプロジェクトを行うことで、横のコミュニケーションの促進にも取り組んでいた。他の事業部の仕事を知ることで、自分の仕事に対して、新たな気づきを得られる効果もあるという。「厳しい状況が生じても、そうした環境を作り、人とのつながりができていれば、共に頑張っていこうという団結した動きが生まれてくる」。

また、不況時にこそ、社員のモチベーションを高める施策が非常に重要になってくる。

研究会に参加していたあるIT企業では、クライアント企業に常駐することが多く、普段はあまり注目を浴びない業務もあったという。そこで、この企業では、人知れず優れた仕事をしている社員を表彰する制度を設け、通常スポットが当たらない社員の業績を積極的に社内で共有しているとのことであった。「自分の成果が会社に貢献していることを理解してもらう」ことで、この企業では、社員のモチベーションを高める環境作りに成功しているようである。

経営環境が大きく変化する中、特に大胆な変革を迫られる不況という時代は、人事部門にとっても、「企業文化の変革」というミッションを果たすべきときかもしれない。

(文責:株式会社ナレッジサイン 森 天都平)
※株式会社日立システムアンドサービスは、2010年10月1日付けの合併により、株式会社日立ソリューションズとして新たにスタートしました。
本レポートは2010年10月1日以前に公開されたもののため、レポート本文中の社名(日立システム)は当時のものとなっております。

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