導入事例

ITSSに基づいた研修ロードマップの作成ノウハウとマネージャーの巻き込み方[09/09/17]

【ITスキル研究フォーラム主催】 ITSS推進ワークショップ
第2回 「ITSSに基づいた研修ロードマップを作成し、部門マネージャーをどう巻き込むか?」

日 時 2009年9月17日
参加者 企業の人材開発部門・技術部門・品質管理部門の方
10社10名
主催・運営 ITスキル研究フォーラム
事務局 株式会社日経BPマーケティング
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 この度ITスキル研究フォーラムでは、ITSSを有効にご活用いただくため、ITSS活用のナレッジを他者と共有する場として、ITSS推進ワークショップの第2回目を開催いたしました。当日は、ITSSを既に導入されている企業様、現在導入検討中の企業様、過去に導入していた企業様など様々なフェーズの方にご参加いただき、ITSS導入までのノウハウや特に今回は、ITSSに基づいた研修ロードマップを作成するノウハウ、ITSSにもとづく研修体制に部門マネージャーを巻き込むノウハウなどについて熱い議論が繰り広げられました。本レポートでは、当日の議論とそのノウハウについて報告いたします。
◆各社の教育の課題とITSSを活用した人材育成について
 本ワークショップのご参加企業が抱えるITSS導入の背景は様々です。

・スキル的に中間に位置する層の底上げをする
・技術者自身がキャリアパスを目指す目標をつくる
・自己啓発をしやすい社内環境を作る
・ITベンダーへの発注の条件として、お客様がITSSのレベル表示を求めている

など各社それぞれの課題から、ITSSの導入を検討しています。ITSS導入の背景は様々ですが、ITSSを技術者のスキルを計るものさしとして活用したいという考え方は、各社共通です。「会社として求める人材像というベクトル」と、「技術者自身が描く将来像のベクトル」「お客様から求められる品質のベクトル」、この3つのベクトルを合せる共通のものさしこそが、ITSSと言えます。ITSSを活用した人材育成をプランニングしていく際に、作業面でも大きな工数を占めるのが、研修ロードマップの作製です。

◆研修ロードマップ作成における具体的作業とそのノウハウ
 ITSSによって明確化された社員のスキルレベルを高めるために、どのような研修を受講すれば良いのかを体系化した研修ロードマップの作成は、人材開発部門の大きなミッションのひとつです。本ワークショップでは、既に自社独自の研修ロードマップをお持ちの方や、ITSS-DSなどが提供する研修ロードマップを活用して自社独自の取り組みをしている方を中心に、実際に研修ロードマップを作成する際のノウハウの共有が行われました。

IPAが提示いている「研修ロードマップ」は職種・スキル項目ごとにどのような教育・研修を実施すべきか、その項目と量を明示したものですが、それぞれの研修項目に具体的にどのような研修プログラムをあてはめれば良いかまでは明示されていません。

 「ITSS-DSが提供するもののように、研修ロードマップに提示される具体的な研修カリキュラムを参考にして、どのような勉強をすれば良いかを技術者にアドバイスしている」(ワークショップ参加企業)

という意見があるように、研修ロードマップ上の研修項目が、研修会社や具体的な研修プログラムのラインナップによって紐付けされたものは、ロードマップを作成するうえで非常に有効なようです。

ITSS-DSなどの研修ロードマップを参照することで診断結果から把握出来た各技術者の弱点補強のポイントに合う研修を知ることが出来ます。研修ロードマップには、研修会社の具体的な研修カリキュラムが掲載されているので、実際に研修を受講しなくても、そのカリキュラムを見ることで、技術者自身でどのような勉強が必要なのかを知ることが出来、人材開発部門としても適切なアドバイスが出来ます。

このようなツールも活用することで、必要な教育・研修カリキュラムを体系化することはできますが、研修実施にはコストがかかります。

今回参加した企業の企業規模は、社員数150名~3000名の企業と幅がありました。その中でも200名前後の比較的小規模の企業は、コスト的に外部の研修会社をなかなか活用できません。また、自社で内製化も難しいため、少額の定額料金で研修を受講できるサービスなどを有効活用していました。

ワークショップ参加企業の中で研修ロードマップを作成している企業のほとんどが、IPAの研修ロードマップをそのまま適用する必要はなく、あくまでモデルとしながら、自社に合ったものを抜粋するという考え方で自社独自の研修ロードマップをつくっていました。

「既存の研修ロードマップからおいしいところだけを取ってきて、自社にあわせた形で作った」(ワークショップ参加企業)

研修ロードマップは、人材の教育を、現場のマネージャーのOJTだけに頼るのではなく、全社的に戦略的な人材育成をするためのツールでもあります。現場のマネージャーにとっては、研修ロードマップが整備されていることで、OJTの負担が減るという視点もあります。しかし、自部門の人材を研修に派遣したり、そのコストを負担するなど、ある程度のコミットは必要です。研修ロードマップによる教育の実践には、現場のマネージャーの協力が不可欠です。

「研修ロードマップの作成にあたって、各部門から集めた人員で人材開発委員会という全社横断組織を作り、ロードマップ作成の段階から現場のマネージャーにコミットしてもらった。」(ワークショップ参加企業)

というもの企業もありました。このように、ロードマップ作成段階から現場を巻き込むことで、研修ロードマップ自体に現場のニーズを反映し、当事者意識を持たせる。これによって研修ロードマップ作成自体もその後の運用もスムーズになったということです。

◆現場を巻き込むノウハウツールとしての研修ロードマップ
 ワークショップ参加企業のほぼ全員が、ITSS導入後の運用において現場の協力体制をいかにつくっていくか、ということが大きな課題になっていました。

新しい「ものさし」での目標管理を現場のマネジメントに持ち込むことになります。

・純粋に部下との面談の時間が増える
・業績と別の新しい指標でどのように目標管理していけばいいのかわからない
・プロジェクトマネジメントはわかるけど、部下のキャリアを支援するマネジメントをどうすればいいのかわからない
と言った、マネジメントへの新たな負担を増やすことにもなります。

ワークショップの参加企業の多くは、研修ロードマップの整備が、
・マネジメントのOJTによる負担を軽減するもの
・研修ロードマップ作成の過程を生かして現場のマネージャーをうまく巻き込むもの
という風に、研修ロードマップそのものが、現場を巻き込むツールになり得ると考えていました。

◆現場を巻き込むためのノウハウツール
 その他にも、ITSSの運用を成功させるための現場の巻き込み方について、いろいろと情報交換されました。

ITSS導入に伴い、マネージャーが技術者に対して、ITSSの診断結果にもとづいた目標管理の面談を行うことが新たに発生します。この面談をどう進めていけばいいのか、ITSSの診断結果をどう読み取り、部下にどう指導していけばいいのか、現場のマネージャーには戸惑いがあります。

そこで、人材開発部門としてのサポートが必要になります。
「必要な資格やキャリアパスを決める打ち合わせを現場のマネージャー全員を集めて実施する」(ワークショップ参加企業)

という風に、ITSSの診断結果だけをポンとマネージャーに渡すだけではなく、ITSSにもとづく目標管理の仕方のすり合わせをする企業もありました。

また、ITSSの診断結果を編集して、スキルの評価をしやすい材料を提供することも重要です。
「診断結果を部門ごとにまとめ、過去の結果と比較して診断値の伸び率を明確にした資料を作成する」(ワークショップ参加企業)

 「本人以外の名前を全部塗りつぶして、業界平均や部門平均と比較したデータ資料をつくって、面談に活用してもらっている」(ワークショップ参加企業)

など、現場のマネージャーの視点に立ち、チームのスキルレベルの現状把握と各技術者への評価ができる資料を提供することで、マネージャーの業務の負荷を軽減しているという意見がありました。

◆ 技術者が積極的に研修ロードマップを活用するために必要なこと
 人材開発部門が、技術者のスキルアップのためにどんなに素晴らしい研修ロードマップを用意したとしても、技術者が受講しなければ意味がありません。研修ロードマップにもとづいた体系的な教育を技術者が受けるために人材開発部門が出来ることは、

・技術者にやる気を起こさせるための仕組みづくり
・忙しい技術者が研修を受けられるようにする仕組みづくり
です。

技術者にやる気を起こさせる仕組みとしては、認定資格制度や、報奨金制度など、自己研鑽の努力に報いる社内制度の整備などがあげられました。

また、忙しい技術者が研修を受けられるようにする工夫としては、
「技術者のプロジェクトとプロジェクトの間を見逃さず、その間に研修を受けさせたり、同じ研修でも複数の時間を用意したりする」(ワークショップ参加企業)
などの現場のマネジメントの取り組みが重要です。

今回の議論で、「研修ロードマップ」は、体系的な育成の青写真であるとともに、ロードマップを作成する作業自体に、現場を巻き込むという、ITSS導入上のもっとも大きな課題を解決するヒントがあると感じました。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)

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