経営に役立つ ”攻め”の人事/労務部門となるためには[11/05/18]

日立ソリューションズ(旧 日立システムアンドサービス)主催
人事/労務管理リーダーのための「ヒューマンキャピタル研究会」 第17回
事業継続と人事戦略「事業の継続・発展を支え、経営に役立つ “攻め”の人事/労務部門となるためには」

日 時 2011年5月18日
参加者 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 6名
主 催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 日立ソリューションズでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、人事/労務管理に関する互いのナレッジを交換していただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、2008年7月より、定期的に開催しております。2010年度のヒューマンキャピタル研究会では、「人財価値(パフォーマンス)を最大化するための人事/労務ミッションとは」をキーフレーズとして、さまざまなテーマで議論をしてまいりました。また、3月11日に発生した東日本大震災に伴い、事業継続性の観点から人事/労務の役割が一層重要になることが改めて明確になったことから、「事業の継続・発展を支え、経営に役立つ “攻め”の人事/労務部門となるためには」をテーマに議論いたしました。本レポートでは、第1部で人事/労務としての震災に伴う対応について、第2部では経営に貢献する”攻め”の人事/労務になるために必要なことについて、交わされた議論の様子をお伝えいたします。
◆第1部 震災に伴う人事/労務の動き
震災当日から1週間は安全性の確保を最優先に対応し、勤怠の扱いは柔軟に
 2011年3月11日午後2時46分、東日本を襲った未曾有の大地震。本研究会に参加した企業のほとんどは、東京に本社を置く企業であったが、東北に支社や工場を持っている企業もあり、支社への対応はもちろん本社での緊急対応にも追われた。ほとんどの企業で人事/労務として危機管理マニュアルは作成されているものの、想定外のことが多かった。震災当日の人事/労務部門の緊急対応は主に以下の3つだ。
・従業員の安否確認
・首都圏の事業所に勤務する従業員への帰宅指示
・帰宅困難者への支援従業員の安否確認は、携帯メールなどを活用した安否確認システムを使って行った企業が多かったが、通信状態が悪く、リアルタイムでの確認が難しかった。しかし、電話で確認するなどアナログな手段も含め、丸1日かけて従業員全員の安否確認を行ったとのことだった。

また地震発生後、ほとんどの企業が午後4時から5時の間に帰宅指示を出していた。公共の交通機関の停止により、帰宅が困難なものについては事業所での宿泊を許可し、食糧、毛布などの支給や、宿泊する部屋の割り当てなど総務部と共に行ったようだ。

震災当日はすべての企業が終業時間以前に帰宅指示を出していたが、勤怠の扱いについては、「出勤扱い」とした。また帰宅に際して、タクシーや新幹線、ホテルを利用した従業員への対応も、全額会社で負担したり、旅費規程に基づいた対応を行うなど柔軟に判断していた。

震災の翌週からは、計画停電に伴う首都圏の交通の乱れで通勤困難な状況が発生したため、安全性を考慮し、休業手当の措置をとった自宅待機や在宅勤務などの指示を出した企業もあった。

◆節電対策として、大幅な勤務形態の変更を導入する予定の企業は少ない
 電力不足に伴い、厚生労働省から勤務形態など働き方や休み方の工夫を求められているが、参加企業では、サマータイム制や休日輪番制の導入を検討する企業が多かった。しかし、大幅な勤務形態の変更を伴うシフト制などの導入を検討する企業は少数であった。その理由として挙げられるのは、① 電力需要ピーク時間帯にオフィス設備そのものを休止しなければ節電効果が低いこと
② シフト制などの導入により、生産性が低下すること
③ 就業規則の変更について労働組合と合意を取る必要があること
④ 既に十分な節電効果をあげていること
などである。④については、エアコンの温度調整や照明の間引き、エレベーターの使用制限などのこまめな節電で、掲げられている15%削減の目標設定を十分クリアできるのではないかと研究会参加企業の多くは考えている。
◆第二部 経営に貢献できる”攻め”の人事/労務になるために必要なこととは
社内ではあまり高くない人事/労務のプレゼンス
 研究会参加企業は皆、今回の大震災を通して、BCP見直しの必要性を感じているようだ。BCPの策定は、一般的に、リスク管理部門や経営企画部門が中心となるが、人事/労務部門においても、事業継続性を踏まえた中長期戦略を立てることが今後、必要になってくる。しかしながら、今回の震災によって、これまでは事業継続性の観点から人事/労務としての中長期戦略を立てられていなかったのではないかと改めて認識したという。ある参加企業では、これまでワークライフバランスの観点から在宅勤務の活用を考えていたが、このような大震災を通して、事業継続性の観点から在宅勤務の有効性を認識し、今後、制度化を進めるようだ。

今後ますます人事/労務としての中長期戦略が重要な使命を帯びてくるが、現状、どのように中長期戦略を策定しているのだろうか。

アンケートで聞いたところ、経営の中期方針とリンクさせながら策定している企業と、ロードマップはあるものの、山積する人事/労務問題の解決に追われてしまっている企業とに大きく分かれた。

さらにイノベーターとしての役割を求められる人事/労務部門だが、社内プレゼンスはあまり高くないと感じていることがアンケートで明らかになった。【図1】は、人事/労務部門の社内プレゼンスについてどう感じているか尋ねたものだ。

 
【図1】人事/労務部門の社内プレゼンスについてどのように感じておられますか
 「b.イノベーションをもたらすとまでは言えないが、重要な部門であり、業務品質が企業価値そのものを大きく左右すると認識されている」と「h.人事/労務部門は、従業員にとって役立つ存在であるにも関わらず、あまり感謝されていない」の回答に二極化した。重要な部門と自負しているものの、従業員からはあまり感謝されているように感じないのは、人事/労務マターの業務は従業員にとってあまりにも当たり前になりすぎて、空気のような存在になってしまっているからではないだろうか。
◆人事/労務としての発信力が必要
 その原因の一つは、前述したように、人事/労務が空気のような存在となっているため、従業員にはそれらの重要性が分かりづらく、また人事/労務としてもその成果をうまくアピールもできていないことであると、研究会参加企業は指摘する。プレゼンスを向上させる鍵は、人事/労務が手掛けた制度設計や運用の施策により、いかに企業価値を上げているかアピールする発信力が必要だと考えているようだ。発信の仕方だが、自らが行うことはもちろん他者の力を借りて発信することもできる。研究会に参加したある企業では、先進的な育児支援制度を導入しているため、新聞や雑誌の取材をよく受けていた。それらの媒体を通して、自社の良さを認識してもらうことができたという。また、経営者が、人事/労務の施策がどれだけ売上に貢献したか発表することで社内プレゼンスを上げた企業もあった。
◆事業継続性の高い人事/労務施策を考えるために
 今回の震災をうけて、事業継続性の観点から、より一層人事施策の多様化が求められている。計画停電が実施されている期間、交通機関の混乱を考慮し、就業時間を短縮して勤務しなければならない状況があったが、在宅勤務を行った方が生産性に優れていると判断し、在宅勤務制度の導入を検討している企業もあった。また、既に在宅勤務制度を導入している企業では、在宅勤務の災害時における有効性を再認識し、今後推進する可能性を示唆した。このように、事業継続性の観点からワークスタイル変革が促進される可能性が高くなったようだ。また今回の震災により、新たな問題も浮き彫りになった。マネジメント層の意思決定力の低下だ。今回のような大災害時においても、現場で判断できず、人事/労務部門に回答を求めることが多かったという。緊急を要する際は現場での臨機応変な判断が重要になるが、内部統制の強化による権限の集中化が弊害となり、現場のマネジメント層の意思決定力が欠如する結果となった。適切な判断が下せるようマネジメント層へ意思決定力を強化する教育を施していくことも今後、人事/労務部門の重要なミッションになるのではないだろうか。
(文責:株式会社ナレッジサイン 藤原由佳)
※株式会社日立システムアンドサービスは、2010年10月1日付けの合併により、株式会社日立ソリューションズとして新たにスタートしました。

●これまでのヒューマンキャピタル研究会の内容を詳細なレポートにしています。以下をご覧ください。

◆総括レポート PART1 「適正な労働時間管理を実施するために」(2008年12月1日発表)
◆総括レポート PART2 「メンタルヘルス対策への効果的な取り組みとは」(2009年3月10日発表)
◆2008年度総括レポート 「企業価値向上に向けた人事/労務リーダーの取り組み」(2009年6月1日発表)
◆2009年度総括レポート 「2010年の人事/労務における重点課題はどう変わるか」(2010年5月26日発表)
◆緊急調査レポート「東日本大震災 そのとき人事/労務はどう動いたか、そして今後人事/労務が対応すべきこととは」
(2011年6月22日発表)

◆2010年度総括レポート「人財価値(パフォーマンス)を最大化し、企業イノベーションの旗手となる”攻め”の人事/労務のミッションとは」(2011年7月14日発表)

 

お気軽にお問い合わせください。TEL 03-3555-6901受付時間 9:30~18:30(土・日・祝日除く)

メールでお問い合わせはこちら

このエントリーを含むはてなブックマーク Buzzurlにブックマーク livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録

このページの先頭へ