導入事例

新型インフルエンザ、パンデミック(世界的大流行)への対策と課題[09/01/22]

日立ソフトウェアエンジニアリング 主催
~重要業務を継続するためにIT部門が今できる備えとは~
新型インフルエンザ、パンデミック(世界的大流行)への対策と課題

日 時 2009年 1月22日 福岡
参加者 企業のパンデミック対策に携わる
情報システム部門およびリスク対策部門 8名
主 催 日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)が、社会生活の維持、および企業の存続を脅かす大きなリスクとして、深刻な懸案事項となっています。一方、企業におけるITインフラは、その企業を継続させるために無くてはならないインフラとなっています。

本ワークショップセミナーでは、ゲストとして株式会社日立製作所 総務本部 リスク対策部長の小島俊郎氏にゲストとして参加いただき、パンデミック対策の基本について企業にてパンデミック対策に携わる情報システム部門、リスク対策部門の方々と一緒に、在宅勤務環境の構築など、パンデミック時の具体的な施策や、情報システム部門としてパンデミック対策に貢献できるポイントなどについて、ディスカッションをいたしました。本レポートでは、その一部をご紹介いたします。

◆新型インフルエンザが企業活動に与える影響
 動物、特に鳥類の鳥インフルエンザウイルスが、人から人へ感染しやすいように変異したウイルスによって引き起こされるのが新型インフルエンザである。この新型インフルエンザはひとたび発生すれば、その強力な感染力から、短期間に全世界的に流行(パンデミック)することが懸念されている。その感染拡大のスピードははやく、あるシミュレーションによれば、アジアのどこかで新型インフルエンザが発生した場合には、早ければ1週間~3週間で日本に感染拡大するとの想定もなされている。

新型インフルエンザのパンデミックが発生した場合、企業の活動に対して、どのような影響が生じることになるのだろうか。

まず、海外で新型インフルエンザが発生すると、日本国内に感染拡大しないよう、港や空港の使用が制限されると考えられる。交通機能および、物流の供給機能が低下し、企業も大きなダメージを受けることになる。

防止の努力もむなしく、国内に新型インフルエンザが感染した後、大体2ヶ月はピークがあるとのことなので、2ヶ月は維持できるシフト体制も考えておかなければならない。

厚生労働省は、ワクチンやタミフルを使用しないという条件下では、国民の25%(3200万人)が発症し、死亡者は17万人~64万人にも上るとの試算を出している(監修:岡田晴恵『新型インフルエンザ予防マニュアル』p.9を参照)。

従業員の多くが新型インフルエンザに感染し、生命の危機にさらされることになるだろう。加えて、罹患していない従業員も、さらなる感染を防ぐために、外出や移動が制限される事態に発展する。稼働できる人員は激減し、企業の活動力が大きく低下することは避けられないだろう。

◆継続すべき事業を選定する
 とは言え、事業の中には、電気やガス、水道などのライフラインや通信、交通など公共的なインフラもある。また、民間企業の事業活動の中には、国民が生活を維持するために供給を停止できない物品、サービス、あるいは、パンデミック発生時に必要性が増すサービスもある。したがって、パンデミック下でも事業が継続できるよう対策を立てておく必要がある。

非常に重要なライフラインを担うある企業では、その事業が止まってしまうと、社会に甚大な被害を及ぼしてしまうことになるため、「当該事業の運用保守要員のみ出社し、缶詰状態で勤務。それ以外は一切の業務停止」という方針を立てていた。今後はこの方針に沿って対策を進めていくとのことであった。

また、別の企業では、「現在の業務をレベル分けし、継続しなければならない最小限の業務は何か、その業務には何人必要なのかを検討」し、「パンデミック下、従業員の半数は稼働していないとの想定をし、残り半数で2ヶ月間事業を維持できるシフトを考えている」とのことであった。

情報システム部門においても、これらの業務を継続する上で必要となる最低限のITインフラの維持を考えておかなければならない。さらに、有事では通常の業務では起こりえないケースもあり、このケースにより急遽プログラムに変更が必要になったり、サーバーやネットワーク等の対策が必要になる場合もある。

日立製作所 リスク対策部長の小島氏も「その事業が止まった場合にどれくらいの影響があるかの分析(BIA Business Impact Analysis 事業影響度分析)をすることで、プライオリティが決まり、それに応じて、どのような対策をとれば良いかも決まってくる」と述べている。「事業継続計画(BCP)という言葉は、その企業自体の存続を指しているとの印象を与えがちだが、まずは社会のための事業継続である。日立製作所では、社会のための事業継続を行うとの方針をベースに、日立グループのBCPガイドラインを策定している」とのことだ。

◆緊急時の在宅勤務環境をどう整えるか
 パンデミック時の事業継続には、代替就業、隔離就業、分離就業、あるいは在宅勤務が重要である。これらをどう選択して組み合わせていくのか。その中の有力な実現手段の一つとして、在宅勤務がある。ワークショップでも「外出は危険だが、それでも業務を続けなければならないのであれば、可能な限り、在宅勤務にすべきだ」、「事務関連の従業員は、自宅で業務を行うことになるため、シンクライアントも検討せざるを得ない」といった意見が多かった。

パンデミックなど、突発的な事態で臨時的に在宅勤務を実現する上では、USBデバイス1本で自宅にあるクライアントPCをシンクライアント化できるソリューションが有効だ。USBデバイスを挿してクライアントPCをブートさせるとUSBデバイス内のOSが立ち上がり、自宅クライアントPCからインターネットを経由して、会社の自分の机のクライアントPCにリモートでアクセスできる仕組みだ。

擬似的にシンクライアント化した自宅クライアントPCからオフィス内にあるクライアントPCを操作することで、在宅でもオフィスと同等の端末環境を使用することができる。

自宅クライアントPCのハードディスクには、データの書込みができないだけでなく、自宅のプリンタにも印刷できない。したがって、自宅クライアントPCから情報が漏えいするリスクも非常に少ない。

突然明日から会社に出社できない、という事態になっても、オフィス内のPCを起動することさえできれば、瞬時に在宅勤務が可能になる。

企業としては、このUSBデバイスを事前に従業員に配布しておくことで、突然の事態に備えることができる。しかし、USBだけ供給できれば有事の際にも、すぐに滞りなく在宅勤務に移行できるかというと、そういうわけではない。有事の際の行動マニュアルの整備や定期的なトレーニングが必須となる。

定期的なトレーニングだけでなく、ワークライフバランスにおける在宅勤務制度の導入と併せた運用が在宅勤務への切り替えを円滑にする有効な方法のひとつでもある。

ただ、パンデミック時には在宅勤務が増えるため、通常よりもネットワークが混雑することが予想される。物理的なネットワークインフラへの事前の対策は考えておくべきだろうし、ハードウェアの障害に対する縮退運転やディザスターリカバリーサイトの構築といったことも重要である。

◆パンデミック対策を進めていくために
 パンデミックによる被害は非常に深刻なものになると予想されており、事前にリスク対策におけるガイドラインを立てておくことは企業および社会の維持存続にとって必要不可欠である。しかし、企業のリソースは限られており、有効な施策をすべて実行できるわけではない。リスク対策を立てる上では何から手をつけ、何をゴールと置けばよいのだろうか。

「企業としては「満点の対策」ではなく、「合格点の対策」を目指すべきだ。それぞれのリスクに対して、いかに配分していくか。皆が納得できる対策が基本になる」(日立製作所 リスク対策部長 小島氏)。

そのための第一のマイルストーンとして、小島氏は社員への教育の徹底と、基本的な備蓄を挙げている。「まず、組織の中の1人1人に新型インフルエンザについて知っていただき、理解していただく。と同時に、有事の際には外出しない、移動しないことが基本となるため、水や食料、マスクなど、最低限必要なものを備蓄する。この2つはその後の様々なリスク対策の原点となる」。

この不況下、「もしも・・・」のときのために投資をするのは難しい状況であるが、新型インフルエンザがひとたび感染拡大すると、その被害は莫大なものだと予想されている。各社のリソースに応じた効果的な対策を進めていくことは、社会公共インフラの一部である、我々企業に課せられた責務と言えるだろう。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)

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