人財情報の見える化は企業価値を上げるか[11/11/22]

日立ソリューションズ 主催 「ヒューマンキャピタル研究会」Vol.20
人事/労務リーダーの皆様による、情報交換会2011
第3回 「人財情報の見える化は企業価値を上げるか」
~人財情報コックピットで経営やマネジメントを強化する~

日 時 2011年11月22日
参加者 人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 12名
主 催 株式会社日立ソリューションズ
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
2008年7月より開催している日立ソリューションズ主催の「ヒューマンキャピタル研究会」2011年度は、企業にイノベーションをもたらす ”攻め”の人事/労務を目指し、全5回に渡り、勉強会を開催いたします。11月22日に開催した研究会では、第3回は、「人財情報の見える化は企業価値を上げるか」をテーマに、議論しました。その模様を本レポートにてお伝えいたします。
◆人財情報の見える化を議論する際のフレームワーク
 人財は、重要な経営資源であり、人財情報を見える化することは、経営アクションにおいて重要なテーマである。企業の業績や経営資源の変化を見える化するBIと同じように、人財情報を見える化するための、なんらかのデータベースを構築している企業は多い【図1】
 
【図1】研究会参加企業の人財情報データベースへの取組み
 BIの場合、「何を見える化するのか」よりも、見える化により、「どんな意思決定をするのか」が重要であるが、同様に人財情報の見える化においても重要なのは、「何のために」という目的である。人財情報を見える化する目的を研究会参加者に聞いた。【図2】
 
【図2】研究会参加者に聞いた「人財情報の見える化の目的」
 回答として多かったのが、「人財の適正配置・アサイン」、「従業員の育成」、「従業員個人のキャリア開発」などであった。目的を考える際に重要なのは、これらの目的のために人財情報を誰が、どのように活用するかだ。その活用の仕方をイメージできて、初めてどんな情報が必要なのかが明確になってくる。研究会では、次頁のようなフレームワークで「人財情報の見える化」を議論した。【図3】
 
【図3】人財情報の見える化を議論するフレームワーク
◆目的に応じて人財情報をどのように活用するのか
 目的としてもっとも多かった「人財の適正配置・アサイン」の場合、「誰が」という視点で考えると、活用の仕方は二通りある。・事業部や現場のマネジメント層が自部門への人財配置のために活用する
・人事部やトップマネジメントが、会社全体の戦略的な人財配置の意思決定に活用する
前者の場合、事業部や現場のマネジメント層が、自部門のタスクに必要な人財を配置する目的で、過去のプロジェクト経験や保有スキルなどを検索し、求めるスキルや能力を持った人財を全社の中から発掘する、といった活用が既に行われているようだ。一方、後者については、事業部まかせで行われていた人事異動を、人事部に集権化させ、コーポレート全体としての戦略的な意思決定を強化したいと考える企業が増えていることが背景にあるようだ。全社的にグローバル人財の強化が重要な経営戦略として示された場合に、グローバル人財が全社のどこにいるかを発掘する目的などで活用する。ただ、どのようなタイミングで全社的な意思決定をするのか、そのためにどのような情報が必要なのかは、必ずしも明確になっていない。まずは、全社の人財を横串で見られるようにすることを当面のゴールとする企業は多い。「従業員の育成」、「従業員個人のキャリア開発」は、主にマネジメント層が活用するイメージだ。部下のスキルや志向、目標管理の内容などの情報をストックしておければ、人事異動があっても、部下のマネジメントに必要な情報がいつでも引き出せる。

ただ、情報のストックと閲覧のしやすさで個々のマネジメント効率を上げるが、「全社を俯瞰した見える化」によって育成やキャリア開発にどう活用できるかは、これからのようだ。

たとえば、自分のスキルが全社の中でどれくらいのポジションなのか、自分で確認し、キャリア開発に活かす。あるいは、他部署の目標管理の内容を参考にして自分の部下の目標管理に活かす、といったことは、物理的には可能と思われるが、まだそのような運用はなされていないようだ。

◆どのような人財情報を把握するのか
 それでは、そのような目的のためには、どのような情報を把握する必要があるのか。研究会参加者の挙げたキーワードを要素別に分類したものが以下の図だ。【図4】
 
【図4】見える化の対象とする人財情報とは
  業務や職務履歴、また、保有スキルをある程度見える化することができれば、スキルに応じた適切な人財配置が可能になるはずだ。さらにパーソナリティの把握もできれば、プロジェクトの性格に合わせた技術者の配置、顧客特性に合わせた営業担当の配置といったことも可能かもしれない。また、本人の志向も正確に把握することができれば、育成、キャリア開発に有効となる。研究会に参加するある企業では、組織のパフォーマンスやモチベーションを定期的に診断していた。その時々の個人の状態や、マネジメント要因によって左右されるモチベーションを人財情報として扱うのは適当ではないが、モチベーションを個人に紐づけて記録しておくことができれば、組織や環境、個人の特性がモチベーションに与える影響を分析できるかもしれない。そういう意味では、人財情報は、人財個人を判断する材料としてだけでなく、人財情報を通して組織やマネジメントの課題を理解する分析データとしても活用できる。
◆人財情報を把握するうえでの課題
 人財情報を把握するうえでの課題は、大きく分けて以下の2つだ。
・人財情報入力の徹底
・人財情報の粒度
従業員の基本属性や勤怠・査定・給与などの人事データと異なり、スキルや経歴、志向などが中心の人財データは、マネジメント層や従業員が任意に入力する形式が多いようだ。従業員にとっては、入力のインセンティブが不明確なため、入力の徹底が難しく、網羅性が低くなってしまう。また、入力形式も自由記述で任意のため、情報の粒度が揃わない。たとえばマネージャーが、「クラウド」という技術に関わるプロジェクトの経験を持つ人財を発掘するために「クラウド」というキーワードで検索しようする。このとき、業務経歴の入力方法が自由記述式の場合、従業員が業務経歴において「クラウド」というキーワードを入力していないと検索にはヒットしないことになる。このように、情報の粒度が揃わないと、検索が有効に機能しないのだ。人財情報データベースによる人財発掘を有効に機能させるためには、「人財情報マスタ」のようなものを作成する必要がある。ある職務を経験すると、それがどんなスキルに結びつくのかすべてが定義されているものだ。「人財情報マスタ」のようなものが整備されると、自動入力も可能になり、網羅性が高くなる。実際に人財情報マスタのようなものを作成するには大きな労力が必要だ。研究会参加企業の中には、人財情報マスタを作成した企業があったが、作業は1年がかりであった。しかも、企業戦略やスキルの移り変わりによって、マスタも更新していかなければならない。BIの議論と同じく、すべてが正確に見える化されていないと意思決定できないわけではない。人財情報の見える化にも段階があるだろう。人財情報マスタがなくても、人財情報の見える化、そして人財戦略の意思決定は可能だ。しかし、今後より戦略的な人財活用を進めていくためには、「人財情報をどのような目的のために、誰が、どのように活用するか」を踏まえたうえで、人財情報を見える化する、ある程度の基準は必要となってくるだろう。
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)

●これまでのヒューマンキャピタル研究会の内容を詳細なレポートにしています。以下をご覧ください。

◆総括レポート PART1 「適正な労働時間管理を実施するために」(2008年12月1日発表)
◆総括レポート PART2 「メンタルヘルス対策への効果的な取り組みとは」(2009年3月10日発表)
◆2008年度総括レポート 「企業価値向上に向けた人事/労務リーダーの取り組み」(2009年6月1日発表)
◆2009年度総括レポート 「2010年の人事/労務における重点課題はどう変わるか」(2010年5月26日発表)
◆緊急調査レポート「東日本大震災 そのとき人事/労務はどう動いたか、そして今後人事/労務が対応すべきこととは」
(2011年6月22日発表)

◆2010年度総括レポート「人財価値(パフォーマンス)を最大化し、企業イノベーションの旗手となる”攻め”の人事/労務のミッションとは」(2011年7月14日発表)

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