職場復帰支援とメンタルヘルス不全未然防止の有効性[09/01/27]

日立ソリューションズ(旧 日立システムアンドサービス) Presents
メンタルヘルス対策 PART2』
職場復帰支援における人事を悩ます困難な現実と
メンタルヘルス不全未然防止の有効性について議論する
人事/労務管理リーダーのための「ヒューマンキャピタル研究会」Vol.5

日 時 2009年1月27日
参加者 企業の人事・労務管理担当者5社6名
主 催 株式会社日立システムアンドサービス
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 日立システムアンドサービスでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を開催しております。第5回のテーマは前回に引き続き、「メンタルヘルス」です。多くの企業で、メンタルヘルス不全を理由とした長期休職者が発生するなど、従業員のメンタルヘルス対策が急務の課題となっております。今回は職場復帰支援と早期発見に焦点を絞り、現実的な課題についてナレッジを共有しました。当日のディスカッションの一部をご紹介いたします。
職場復帰後の一番の問題はパフォーマンスの回復
 メンタルに関わる疾病が発症したとして休職期間に入ると、医学的な回復までは医師の手に委ねられ、やがて職場復帰が可能と判断されると、再び人事/労務が主導となり、職場復帰プログラムに入る。職場復帰先としては、前職場での特定の人間関係が原因の場合を除いて、休職前の職場に復帰させることが多い。当然これまでと同じ職務・ミッションの遂行を期待することになるのだが、本研究会参加企業によると、休職前のパフォーマンスに戻る例はむしろ稀のようである。

リハビリ的に、復帰直後は別の職務を与え、徐々に元の職務に戻すスタイルをとっている例も紹介されたが、元の職務を遂行できるパフォーマンスまで回復させることは難しいようだ。

パフォーマンスがなかなか上がらない要因は、医学的な面でいうと、メンタル面の疾病では睡眠障害を伴うことが多いので、就業時間中の集中力に影響するという側面もあるが、本人の心理面、周囲の関わり方など、さまざまな要因があり、一概には言えない。

ただ、研究会参加者の多くは「そもそも職場復帰が早すぎたのではないか」という見方で一致している。休職期間満了に近くなると、失職の不安から本人としても「戻りたい」という欲求が増し、企業としてもなんとか休職期間満了までに職場復帰を実現しようとする。その結果「早すぎた」復帰となり、パフォーマンスの低下や、再発ということにつながる。

実際に、職場でメンタルヘルス不全になり、職場復帰した方の半数が再発しているという。この数字をもってメンタルダウンは完治しない病であると言うのは早計であろう。ただ、企業の休職期間内で完治を期待することは難しいほど、時間が必要な病であることは確かであろう。

◆無理に早期の復帰はさせない
 そもそも医学的な見地からの病状回復と職務において要求される仕事の質を満たすことは本質的に異なる。主治医や産業医の判断はあくまで医学的な見地からの病状回復である。医学的な病状回復の判断を職場復帰のゴーサインとするのではなく、企業としての職務遂行能力を別途判断する基準を設け、職場復帰を判断している参加企業もあった。具体的には、休職期間満了の6ヶ月前から、本人、上司、産業医と相談しながら、元の職場に戻して本当に期待される職務を遂行することができそうなのか。個別ケースを冷静に判断しながら、クリアすべき客観的なハードルも設けるなど。「職場復帰」=「これまでと同じように働いてもらう」と考えるならば、当然の考え方と言えるだろう。
◆「これまで通りのパフォーマンス」を要求しない職場復帰
 一方、「これまで通りのパフォーマンス」を要求しない職場復帰もあるだろう。具体的には職種を変更する、職制を変更するなど、明確に仕事内容、役割、要求基準を変えて就業してもらうやり方だ。この場合、本人の了解が前提であるが処遇も変わる。管理職としてマネージメントすることが負担になるのであれば、職制を変える。実質的には降格、賃金ダウンにもなるが、自分が許容できる範囲に負担を軽減できるのであれば、その方が本人にとっても安心して仕事ができる。メンタルヘルス不全から本当に回復しようとすると長い時間がかかる。無理をして負担の多い仕事に復帰し、再発を促すぐらいであれば、待遇は以前よりも下がるが、負担の少ない働き方で、仕事をしながら療養していくという選択肢もある。

制度的に可能であれば、さまざまな働き方が用意されていることが職場復帰支援としては理想であろう。最終的にはその会社に勤務し続けることが幸せかどうかもわからない。会社として提供できる職務や待遇では本当に回復をめざすことが難しいのであれば、別の仕事先を見つけることが本人にとっても良いことかもしれない。そういう意味で、メンタルヘルス不全対象者に対するアウトプレースメントの支援をすることも、人事/労務の役割になってくるのではないだろうか。

早期発見の対策を「水際防止」に結びつけるには
 早期発見策については、前回の議論でも出たEAP(従業員支援プログラム)を活用する企業がやはり多い。ただ、EAP窓口を設けている企業は多いが、活用度合いは企業によってさまざまだ。今回、EAPサービスを提供している事業者にも参加いただいたが、企業のEAPの活用度合いを測るものとして、従業員数の3%以上が活用しているかどうかというのが1つの指標になるようだ。ただ、EAPの活用がメンタルヘルス不全に陥る直前の「水際防止」として機能するためには、ガス抜き効果も含め、なんでも気軽に相談できる場所としてEAPが活用されることが重要だ。

多くの企業では、EAPカウンセラーは、産業医よりもハードルの低いものとして、気軽に利用するよう呼びかけているが、自主的にその門を叩くにはハードルが高いと感じる従業員も少なくないだろう。

研究会参加企業の中には、EAPの積極利用を周知するだけでなく、メンタルダウンが危惧される従業員に対しては、職場のマネージャーが「EAPを活用してはどうか」とアドバイスすることもあると言う。

また、最近では社内SNSを導入している企業も多いが、この中で「メンタルヘルス」がテーマとして取り上げられ、メンタルに不安を抱える従業員やメンタルダウン経験者のコミュニケーションの場となり、結果的に早期発見や未然防止につながっている例もあると言う。

◆セルフチェックと人事/労務のコミットのバランス
 兆候を探るという意味では、従業員に対して、自分でストレスチェックなどができる自己診断テストを実施している企業も多かった。テストを従業員の自主的な判断で任意に実施している企業もあれば、全社員一斉に実施している企業もあったが、いずれにしてもテスト結果は原則本人のみに通知される。テスト結果によってEAPに相談するなりのアクションは本人の任意ということになる。プライベートの問題があるので難しいが、これらの診断ツールで顕在化した兆候には、人事としてもなんらかのコミットは必要ではないだろうか。

自己診断テストの結果を人事でも把握し、緊急性が高いと思われるケースでは、フォローをする。あるいは原則秘密ではあるが、EAPに持ち込まれた相談のうち、緊急性が高いとカウンセラーが判断した場合には人事に報告するしくみとするなど。従業員のプライベートや自主性も重要であるが、人事/労務がバランスを保ちながらも、従業員の危険なサインを汲み取り、施策を打てる体制はとっておくべきであろう。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)
※株式会社日立システムアンドサービスは、2010年10月1日付けの合併により、株式会社日立ソリューションズとして新たにスタートしました。
本レポートは2010年10月1日以前に公開されたもののため、レポート本文中の社名(日立システム)は当時のものとなっております。

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