導入事例

シェアードサービス化を成功させるために必要なこと[09/08/27]

日立ソリューションズ(旧 日立システムアンドサービス)主催
「人事のシェアードサービス化を成功させるために必要なこと」
人事/労務管理リーダーのための「ヒューマンキャピタル研究会」第8回

日 時 2009年8月27日
参加者 人事/労務業務の本社集中化やグループ内でのシェアードサービス化を考える企業、または、既にシェアードサービスを導入している企業の人事/労務管理部門のリーダー、マネージャーの方 10名
主 催 株式会社日立システムアンドサービス
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 日立システムアンドサービスでは、人事/労務管理のリーダーの方にお集まりいただき、人事/労務管理に関する互いのナレッジを交換いただく、「ヒューマンキャピタル研究会」を、昨年7月より、定期的に開催しております。

第8回となる今回の研究会では、人事業務のシェアードサービス化について、ディスカッションをいたしました。導入により、コストダウンや、人事サービスの質の向上といったメリットが得られるとされる「シェアードサービス」ですが、導入に至るまでのプロセスや、導入後の実際の効果など、課題も少なくありません。研究会では、すでに導入している企業も交え、人事業務のシェアードサービスに関するナレッジを交換いたしました。その議論の一部をご紹介いたします。

◆「ノンコア業務アウトソース型」と「コア業務本部集中型」
 一口に「シェアードサービス」と言っても、研究会参加企業の考えるシェアードサービスには、2つの意味があった。

給与や社会保険、福利厚生などに関する業務のうち事務作業に関わる部分をアウトソースしてグループで集約化する「ノンコア業務アウトソース型」と、人事制度の設計や、人事戦略の立案など、人事のコアとなる機能を、グループ本部に集中化する「コア業務本部集中型」の2つである。

いずれもグループ会社が業務サービスをシェアするという意味では同じだが、目的や形態はまったく異なる。

一般的にシェアードサービスと言われるのは、「ノンコア業務アウトソース型」を指していることが多い。この主な目的は、参加企業によると人事業務のコストダウンと人事サービスの質の向上である。

「同じ店舗内でも、タイムカードの打刻など、バラバラな管理をしており、非常に不合理だと感じているため、これを一元化できないかと考えている」(研究会参加企業)。

とあるように、人事に関する業務を標準化し、グループで一元化することで業務効率が大きく向上する。さらに、一元化された業務に専門の集団が従事することで、人事サービスの質の向上につながる。

◆グループでの業務の共通化/一元化が難しい
 コストダウンを実現するためには、業務量が削減されるか、業務に従事する人員が削減されるかしなければならない。業務量の削減には、グループで一元化する業務がある程度のボリュームになることが必要だ。

しかし、
「グループ各社で歴史も業務の手順も異なるため、共通化・一元化できる業務が限られる」
「給与計算の場合、データ入力の先のチェックや集計、税金・社会保険料計算という処理は共通化できるが、データ入力の前の”データを揃える作業”にもっとも手間がかかり、属人的な領域でもあるため、共通化が難しい」
という指摘があるように、グループで共通化・一元化できる領域を大きくできないことが課題になる。

また、事務業務はシステム化されていることが多いが、そのシステムがグループ各社でバラバラであることが、共通化・一元化の障害となっている。グループで業務を一元化するためには、必然的にシステムの一元化も伴うケースが多いだろう。

さらに、本格的に共通化・一元化の領域を広げるためには、人事制度の共通化にまで踏み込む必要があるのではないか、という参加者の問題提起もあった。

◆ノンコア業務の質の向上とコア業務の質の向上
 人事サービスの質の向上という点では、本来は専門家集団に委ねるわけなので、質は向上するはずなのだが、
「本社人事部とシェアードサービス提供会社との間の連携がうまくとれていない」
「社員にとって人事に関する相談を簡単にできる相手がいなくなる」
「シェアードサービス提供会社の人材の質の差が激しい」
などと、全体ではないが、質の向上という点で、現場の不満が増えるケースもあるようだ。

この「人事サービスの質の向上」には、アウトソースするノンコア業務の質の向上という意味と、ノンコア業務をアウトソースすることでコア業務に集中することができ、人事制度設計などのコア業務の質を高める、という意味もある。

コア業務の質の向上という視点で課題として指摘されたことが、「ノンコア業務に従事することで得られる人事部門若手担当者の育成の機会」を失ってしまうということである。

人事部に配属されて人事の仕事を学んでいく過程では、ノンコアとされるような処理業務の実務を経験することが大切だ。この経験がより高度な業務を実践していくときの重要なベーススキルになる。しかし、アウトソースによってこれらの仕事を経験する機会を失うことで、シェアードサービス導入の数年後に、コア業務の質に影響が出てくる可能性が懸念される。実際に、シェアードサービス化を導入している研究会参加企業は、「人事部員における人事業務の理解度の不足や人事関連法令の理解度の不足が起こる」ことを実感していた。

◆コア業務を本部に集中し、人事ガバナンスを高める
 一方、グループ各社に対する人事ガバナンスの強化や内部統制の強化、人材の底上げといった観点から、人事制度の設計や人事戦略の立案など、人事のコアとなる機能を、グループ本部に集中化することを検討している企業もあった。

「コスト削減だけを目的とするのであれば、実務作業だけをシェアードすれば良いが、ガバナンス強化という観点からは、それ以上のシェアード化が求められる。もし仮に子会社の1つが何か労務上の不祥事を起こした場合、親会社の管理責任も問われる。労務面で何か問題が起こったときに、連結での労務リスクを親会社も認識していなければならないという問題意識を持っている」(研究会参加企業)

ノンコア業務とは逆に、コア業務を本部集中型にするという考え方だ。

研究会では、かつてノンコア業務のアウトソースという形でつくっていたシェアードサービスセンターを廃止し、人事業務を親会社の人事部に集中させるようにした企業もある。

また、ある企業では、
「地方にあるグループ子会社には、それぞれベテランの総務・人事担当者がいるが、その人間が退職してしまうと、採用や教育も含め、業務がままならないというリスクがある。そこで将来的には、親会社の人事部内にグループの採用や教育を一括して行う機能を持った組織をつくり、経営理念の浸透なども含めて、実行していく形にしたい」
ということで、人事業務の本部集中型を模索している企業もあった。

シェアードサービス化を論じるうえでは、ノンコア業務のアウトソースと、コア業務の本部集中化の両軸で議論をしていくべきかもしれない。

引き続き次回以降も研究会では、このテーマを取り上げ、シェアードサービス化を進めるにあたりさらに具体的な内容についても議論していきたい。

(文責:株式会社ナレッジサイン 森 天都平)
※株式会社日立システムアンドサービスは、2010年10月1日付けの合併により、株式会社日立ソリューションズとして新たにスタートしました。
本レポートは2010年10月1日以前に公開されたもののため、レポート本文中の社名(日立システム)は当時のものとなっております。

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