導入事例

クラウド新時代を見据えた自社IT基盤の課題を考える[09/10/30]

【TIS主催】 次世代IT基盤のロードマップを考える研究会
~クラウド新時代に向けて今IT部門がなすべきこと~ 第2回
クラウド新時代を見据えた自社IT基盤の課題を考える

日 時 2009年10月30日
参加者 ITインフラの再整備について考える企業の情報システム部門リーダー 5名
主 催 TIS株式会社
ファシリテーター
株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
 TISでは、情報システム部門のリーダーが、自社のITインフラにおける課題を共有し、いずれ本格化する「クラウド・コンピューティング」の時代にむけて、あるべきITインフラの姿や、IT部門が今なすべきことについてディスカッションする『次世代IT基盤のロードマップを考える研究会』を発足いたしました。第2回となる今回の研究会では、参加企業のIT基盤に関する課題を共有した上で、各企業の課題に対しクラウドにどのような貢献が期待できるのか、各社のIT基盤の課題とクラウドとの接点についてディスカッションをいたしました。本レポートでは、研究会の議論の一部をご紹介いたします。
◆IT基盤に今強く求められていること
 急速なビジネス環境の変化を背景に、現在、IT部門に対する要求もますます高くなっており、それゆえIT基盤にもこれまで以上に高度なもの、多様なものが求められている。研究会では、まず、現在各社が抱えているIT基盤上の課題について議論を行った。研究会に参加していたある企業では、企業間の合併や、組織変更、事業の移転などに対応するため、システムにもこれまで以上のスピードが求められているとのことであった。「ビジネスの計画に対し、システムの立ち上げになぜそんなに時間がかかるのかとユーザーから不満の声も挙がっている。システム対応がネックとなって、事業の再編などがすぐに実施できないことがある」(研究会参加企業)

スピードだけではない。提供するサービスの質についても要求されるレベルは高くなっている。「24時間365日稼動しているべきシステムの数が急激に増えてきている。以前は、年に1回、電気設備の点検をすることも可能だったが、現在ではそれも難しいため、電源を2重化して対応している。障害時の対応についても「30分以内の復旧」を求められるなど、ユーザーからの要求が増えてきており、新たな設備投資や運用が大きな負担になってきている」(研究会参加企業)

また、別の企業では、多様化するビジネスに対し、個別でシステムを立ち上げていった結果、システムコストが増大し、TCOの抑制が大きな課題になっているとのことであった。

◆クラウドの定義の整理
 こうした課題を解決していく上で、クラウドにはどのような効果が期待できるだろうか。その議論の前にクラウドの定義を整理したい。「クラウド」は、ITをサービスとして調達する場合の一手段と言える【図1】。

【図1】

サービスとして調達するということは、資産を持たず、従量制でのコスト負担をすることである。そのための形態がいくつかあり、クラウドはその一つである。

また、クラウドは「雲」のことであり、「雲の向こう」、すなわち、ネットワークの向こう側で、ユーザーにとっては「どのようにシステムが実現されているかがわからない」ことが、クラウドのクラウドたる所以と言えるが、このように、ロケーションが不明で不特定多数でリソースを共用する形を「パブリック・クラウド」、グループ企業間など特定の企業間で、ある程度個別に構築されたシステムを共用することを「クローズド・クラウド(エンタープライズ・クラウド)」と表現することが多い。

さらに、クラウドのサービスは、ハードのレイヤーであるHaaS、プラットフォームのレイヤーであるPaaS、アプリケーションのレイヤーであるSaaSと区別されて議論される。

これらを前提に、クラウドが企業のIT基盤の課題にどう貢献するか、考えていきたい。

◆クラウドが実現するビジネスのスピード化
 ビジネスへのよりスピーディーな対応が課題となっているある企業は、クラウドによってシステム調達時間の短縮が考えられるのではないかと述べている。「システム構築の際、思ったより必要なハードディスク容量が多くなってしまい、再度追加購入をしなければならないといった場合に、HaaSによって非常に早く対応できるのではないか。また、開発環境にクラウドを使う、あるいは、BCP対策のシステムを準備する上で、PaaSも使用可能なのではないかと考えている」(研究会参加企業)。

この点については、主催者であるTIS自身、PaaSによる自社内のプラットフォーム調達を行っている。IT基盤サービス事業部 IT基盤サービス企画部の田淵 秀氏によれば「企画をし、見積を取り、設計をするとなると、時間もかかり、カットオーバーが半年後、ということにもなりかねない。今日明日で何とかシステムを調達したいという場合に、クラウドのような技術を使えば、その時間を大きく短縮することができる」とのことであった。

研究会に参加していたある企業は、カンパニー制をひいており、その中でさまざまなビジネスモデルの事業が混在している。クラウドを導入することで、多様なビジネスシステムを標準化し、ITコストを抑制しながら、素早くビジネスを立ち上げていく可能性について言及している。

「様々な事業があり、その変化も非常に激しい。今後はそれぞれの事業に対し、個別にシステムを立ち上げるという前提が弱まる流れにあるのではないか」(研究会参加企業)。

もちろん、「本来であれば、ビジネスのためにシステムがあるのであって、クラウドのためにビジネスを変えるのは本末転倒」である。しかし、「逆説的ではあるが、ベースとなるいくつかのIT基盤の中から、ビジネスに応じていずれかを選択してもらうという、ある意味で「システムからビジネスを考える方法」がビジネスのスピードをアップさせるのではないか」と、この企業は述べている。

◆クラウドに求められる信頼性
 クラウドにはIT基盤課題の解決に対する貢献が期待されている。しかし、その一方で、実際にどこまでの解決が可能かについては、今後クラウドがどのように、あるいはどの程度まで成熟していくのかに大きく依存している。上記のような課題を解決する上で、クラウドにはどのようなことが求められるのだろうか。研究会では、この点についても議論がなされた。まず、問題となるのがシステムの信頼性、および、セキュリティである。クラウドのそもそもの意味合いは、前述のように「雲の向こう側でどのようにシステムが実現されているかわからない」ことを良しとすることだ。つまり、究極的には「今日は東京のデータセンターにあったものが、翌日には地球の裏側にある」といった可能性もあるということになる。その場合には、システムのセキュリティがどのようにして担保されるのかという疑問が当然出てくるだろう。

また、クラウドを提供する際にインターネットを使用するとすれば、ネットワーク上でのセキュリティも問題となる。重要なデータや個人情報の漏洩がないよう、十分な対策が取られなければならないが、この点で不安を感じる企業も少なくないようだ。

もちろん、クラウドを使用するシステムの重要性や、性質によって、どこまでのレベルの信頼性・セキュリティが求められるかは異なってくるし、「どのようにシステムが実現されているかがわからない」点をどこまで懸念するかも異なってくる。

研究会に参加していたある企業は「たとえセキュリティについてSLAで定めてあっても、システムがどこにあるかが把握できていなければやはり不安であるため、企業として絶対に外部に出せない情報があれば、クラウド化することは難しい」と考え、開発環境やBCP対策のためのシステムの範囲でのクラウド活用を考えていた。他方、「何がどうなっているか、我々にはわからなくても、要求したサービスレベルさえ満たしてくれるのであれば、どこでどうシステムを実現していても構わない」との考えもあった。

これに対して、TISの田淵 秀氏は、「システムの運用実態を可視化すること」の重要性を述べていた。クラウドサービスの提供者から提供される自社のシステムがどこにあり、どのような状態で運用されているのか、明確にする。

「クローズド・クラウド(エンタープライズ・クラウド)」はまさに、利用者とシステムの運用実態を可視化したものと言えるだろう。

◆プラットフォームの技術標準
 信頼性のほかにも、PaaSの技術標準が今後どうなるのかという問題も指摘された。技術標準については、「そのクラウド事業者のシステムでなければ使えなくなってしまい、移植ができなくなる可能性を恐れている。サービスを提供する事業者の間でプラットフォームを標準化できなければ使いにくい」(研究会参加企業)と、事業者による囲い込みを懸念する企業もある。また、自社でクラウド上のシステムを活用していくことを考えた場合、現在、自社が進めているプラットフォームの標準化の方向性と、クラウドによって提供されることになるプラットフォームとが一致していなければ、クラウドを活用しにくいという側面もあるだろう。「クラウドのプラットフォームに、どうしてもこのミドルウェアを入れてほしいというケースも出てくる可能性がある」(研究会参加企業)。

とは言え、プラットフォームの多様性を確保しようとすると、クラウド事業者にとってのコスト負担はそれだけ増大し、結果としてそれはサービス価格に転化されることになってしまう。

クラウドの登場には関係なく、研究会に参加する各企業において課題になっているのが、プラットフォームの標準化だ。

ビジネスの要求を実現し、素早くシステムを立ち上げるためには、IT基盤が整備されていなければならない。システムごとにプラットフォームがバラバラなため、システムがすぐには立ち上がらない。拡張性に欠ける、という問題をどの企業も抱えている。

研究会に参加していたある企業では、「オープン化する際に標準を作らなかったために、非常にたくさんのサーバーがある」「パッケージも自社開発システムも混在しており、自社開発でもWindowsやJavaなど様々であるため、大きな運用コストがかかっている」といった課題を抱えていた。「ビジネスサイドが言っていることを全部実現しようとすれば、システムも多様化してしまう」。

そこで、この企業では「先に基盤を決めてしまい、そこに載るようにアプリケーションを工夫していく」という、プラットフォームの標準化に取り組んでいた。

クラウドの利用は、言ってみれば、用意されたプラットフォームに合わせて自社のシステムを構築していくことだ。各企業が独自に取り組むプラットフォームの標準化のゴールが、クラウドと接点を持つことで、クラウドを利用すること自体が、自社のプラットフォームの標準化を加速化させることになる。

これが、IT基盤のロードマップをつくっていくうえでの、クラウド活用の理想の姿と言えるだろう。

企業がクラウドを活用し、自社のIT課題を解決していくためには、一方で自社のシステムの標準化を進めていくと同時に、他方でクラウドの潮流がどのような流れになっているかを把握することで、IT基盤の課題とクラウドとの接点を見定めていく必要があるだろう。今後も、本研究会ではクラウドに対する最新の動向を共有し、各社の先進的な取組み例を共有していきながら、さらに議論を深めていきたい。

(文責:株式会社ナレッジサイン 森 天都平)
 
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