コラム

「議論のプロセスにコミットする」簡単にできる、議論の場でのリーダーシップの示し方 “グローバル人材育成なら英語でファシリテーションでしょ?”コラムVol.8

このコラムでは、プロのファシリテーターである私自身が、2013年から世界を舞台にグローバルファシリテーションに挑戦し、いろいろと試行錯誤しながら学んだことを、等身大で語っていきたいと思います。

若くても堂々と自己主張できる外国人の積極性に学ぶ

 
2016年から、「英語で学ぶグローバルファシリテーション・ワークショップ」”SPOT on Facilitation” というワークショップを日本でやっています。3日間みっちりと、文字通り英語でファシリテーションを学ぶというものです。
講師も外国人で、もちろん講義はすべて英語。海外などグローバルなシーンでリーダーシップを発揮すべきグローバルリーダーが、ファシリテーションを通じて、グローバルな舞台でリーダーシップを発揮できる力をつけようとするものです。

今回は、そのワークショップでも学ぶ「英語の議論におけるリーダーシップ」とは、どういうことなのか、考えてみたいと思います。

先日、日本のグローバル人材育成の分野で第一人者である、石倉洋子先生が主催する「ダボスの経験を東京で」というイベントに参加してきました。
これは、世界経済フォーラムの年次総会として知られる、通称「ダボス会議」のような雰囲気を手軽に、というコンセプトで、誰でもが参加でき、これからの世界経済や社会・技術の変化、あるいは温暖化問題から貧困問題に至るまで、実際のダボス会議で議論されるようなトピックを取り上げて、英語で議論しようというイベントです。

参加者は、日本人が3分の2、外国人が3分の1ぐらいの割合で、総勢40~50名の参加者が6~8名のグループを組んで英語でディスカッションをします。毎回テーマが決められており、たとえば「15年後の食糧問題にどう対応するか」といったトピックで、各グループで45分間ほどディスカッションし、なんらかの解決アイデアを出していきます。そして最後にグループごとのプレゼンテーションをする、というものです。

外国人参加者が多いので、どのグループでも、日本人とネイティブイングリッシュスピーカーの外国人が一緒に議論することになります。私も3年ほど前から定期的に参加しているのですが、英語で議論する力を身につけるうえでは、非常に良いトレーニングの場になりますので、興味のある方は、一度参加されると良いでしょう。
⇒「ダボスの経験を東京で」についてはこちら
 

先日私が参加したグループでは、日本人3名と外国人3名のグループで、今から15年後を見据えた食糧問題にどう対処するか、というようなトピックで議論しました。
このイベントに参加する日本人には、帰国子女の方や、海外経験数十年というクラスの方が多く、外国人相手に堂々と議論し、高いプレゼンスを示す方が多いのですが、ビジネスで普段英語を使っています、というレベルの日本人になると、グループディスカッションでは、外国人にちょっと圧倒され気味になります。私の参加したグループでは、私も含めてネイティブ並みに英語を話す日本人はいなかったので、グループディスカッションの80%の会話は外国人が占める感じになっていました。

このグループディスカッションは、基本的にブレーンストーミングなのですが、最後のプレゼンテーションに向けて、アイデアの絞り込みをしますので、ちょっとした合意形成も必要になります。

私のグループでは、ドイツ人女性の大学生が積極的に意見を出し、議論を引っ張っていました。非常に聡明で、議論の姿勢もポジティブ。他のグループメンバーは、ある程度キャリアのあるビジネスパーソンが占める中、最年少の大学生が堂々と自己主張し、議論をグイグイと引っ張って、最終的に自分の意見を、グループを代表するアイデアの中心に置きました。

 

強い自己主張で議論の主役になることが、議論でのリーダーシップではない

 

若くても、集団の中で物怖じせずに堂々と自己主張する。まさにグローバルの現場で日本人にもっとも欠ける部分です。グローバルリーダーの基本としては、まず、自分の意見を自分の言葉ではっきり表明することができなければなりません。最近は、Assertiveという言葉もよく使われますが、相手と対等な意識に立ち、はっきりと自己主張できるようになるマインドセットが、やはり必要だと思います。

それでは、自己主張を強くして、議論の主役になれることが、グローバルリーダーとしてのゴールでしょうか。
前述した大学生のコミュニケーション姿勢は、非常に素晴らしいと思います。あの場面で、大学生として参加しながら、積極的的に議論をグイグイ引っ張っていったことを考えると、100点満点のパフォーマンスと言っていいでしょう。
ただ、議論の場におけるリーダーとしての振る舞いであったかどうかは、少し別の見方が必要です。

会議を一つのプロジェクトと考えると、一定の目的のためにメンバーの力を最大限に引き出し、最高のパフォーマンスをもたらすことがリーダーの役割のはずです。そう考えると、議論の場におけるリーダーの役割は、以下のようなものになるでしょう。

・議論の目的、ゴールをメンバーと確認する
・全員が議論に積極的に参加できる雰囲気をつくる
・創造的な意見を引き出すための、積極的な問いかけをする
・最終的に有効な結論を見出せるような議論のプロセスを提案する
・議論が本来の目的をはずれそうになったら、軌道修正する
・限られた時間の中で、創造的な議論ができるように、常に議論のプロセスを見守り、時間管理する

これはファシリテーターそのものですよね。そうなのです。ファシリテーションとは、言ってみれば、議論という場を切り取って、リーダーの役割を示しているものです。

グローバルな舞台で、自分のプレゼンスを示すためには、まずは、積極的に自分の意見を表明できるようにならないといけないことは、間違いありません。でも、自己主張を強くして、自分が議論の主役に躍り出ることは、グローバルリーダーがめざすべきゴールではありません。
帰国子女の方や、海外留学などで海外生活の経験が長い方を除いて、「英語で自己主張できる人」になることは、たしかに高いハードルだと思います。しかし、苦労の末にそれができるようになったとしても、それが当たり前の外国人とやっと同じ土俵に立っただけです。どんな論理にも負けないディベート術を持っているなど、特殊な武器を持たない限り、何のアドバンテージもありません。

日本におけるグローバル人材育成のアプローチの問題点は、日本人を「外国人の当たり前」に近づけることがゴールになっていることです。それでは、一人前扱いされるだけで、リーダーシップを発揮することはできません。
外国人とビジネスでディスカッションする場が多いとよくわかるのですが、議論の場における、ビジネスリーダーの振る舞いと、ただ自己主張の強い人の振る舞いはまったく違います。ロールモデルとすべきは、リーダーとしての振る舞いができる人材なのです。

もし、あなたが今後外国人と議論をするような機会があるならば、グローバルリーダーをめざす訓練の場として、自己主張によって存在感を示すのではなく、リーダーシップを示す振る舞いに挑戦してみてはどうでしょうか。グループでのあなたのプレゼンスは何倍にも高まり、そこで得たものは、グローバルリーダーをめざすあなたにとっての本当の武器になるでしょう。

 

簡単にできる、議論の場でのリーダーシップの示し方

 

それでは、どのようにすれば、議論の場で、「リーダーらしい振る舞い」ができるのでしょうか。
議論におけるリーダーらしい行動とは、前述したファシリテーターの基本的な役割そのものですが、ここでは、誰でも簡単にトライできることを、6つのポイントで紹介します。

1.議論の目的・ゴールを再確認する問いかけをする
「我々の今日の議論のゴールってこれでいいんだよね?」
最初に議論の目的・ゴールを確認するのは、ファシリテーションの基本です。これがないと議論があらぬ方向に行ってしまいます。でも、難しく考えずに、とにかく最初に議論の目的やゴールを確認する問いかけをしてみてください。まずは、全員が同じ方向へ向くことに貢献するのです。

2.自己紹介では、自分がトップバッター。キーワードを1つ用意する。
海外でも、グループディスカッションの始めに、順番に一人ずつ自己紹介することがありますが、その場合は、自分が真っ先に行きましょう。トップバッターの役割は、スタイルと時間配分の見本を示すことです。自己紹介をコンパクトに、印象的に見せるためにも、自分を代表するキーワードを何か考え、そのキーワードを軸に自分を説明しましょう。
私の場合はいつも、
Rock and Roll represents me.
という感じで、Rock and Rollを、自分を表すキーワードにして自分の紹介をしたりします。そのようなスタイルを他の人が真似てくれたりすると、うまく一人ひとりのキャラクターを引き出すことになります。
そして、時間をコンパクトに使うことが肝心です。自分が長々とやると後の人が長くなってしまいますので、自分が時間配分の見本を示すのです。

3.議論の前半では、発言者やトピックを広げることに貢献する
議論の前半、十分な発散が必要な時間帯で、発言する人や、トピックが固定してしまうと、グループ全体の体温が下がって、雰囲気が沈滞気味になります。そんなときは、意識的に
「すごくいい意見だけど、他の人の意見も聞きたいな」
「このトピックは非常に重要だけど、他の観点での意見はどうかな」
と投げかけます。日本人同士の議論だと、声の大きい人が一つのトピックで盛り上がっているときに、こういう投げかけが非常にやりにくいのですが、英語の議論だと、スンナリと言えます。みんなが思い思いに意見を述べるのが当たり前の世界なので、特に違和感を感じないのです。
もちろん、自分から違った視点の意見を出してもいいです。

4.他者の意見を具体的に褒める

外国人は褒め上手です。誰かが意見を言うと、思いっきり褒めてあげましょう。ただし、褒めどころを具体的にすること。
「あなたの意見は、実際の経験をもとにしているという点で、説得力がありますね」
「あなたのその視点は、我々がこれまで気づいていなかった部分に焦点を当ててくれたので、この後の議論の良いヒントになりましたよね」
と言った具合に、その人の意見のどこが良かったのか、どのような点で議論に貢献したのかを示すのです。そうすることで、褒められた人は自信になりますし、他の方への貢献の仕方のヒントにもなります。

5.議論の方向性を1回だけ提案する
実際のファシリテーターは、議論のプロセスを細かく設計します。最初の10分でこれをやって、次の30分でこれをやる、など。普通にフリーディスカッションをやっているときに、グループメンバーの誰かに、議論の進行を細かく提案されると、ちょっとウザイですが、
「次はこんな視点で議論してみてはどうですか?」
と簡単な提案を一度だけやってみましょう。時間帯としては、全体の半分程度の時間帯で。要はあなたの提案で議論の流れが変わる、あるいは方向性が明確になる。そのような貢献ができればいいのです。

6.時間のアラートを3回告げる
議論のメンバーは自分の意見を言うのに意識が集中して、時間の経過に気を配る人はほとんどいません。誰かがタイムキーパーをやらないと、時間切れで中途半端な議論に終わってしまい、消化不良になってしまいます。そこで、あなたがタイムキーパー役を買ってでるのですが、時間のアラートを示すタイミングを、大きく3回と考えてください。

1回目:ざっくりと半分ぐらいの時間⇒議論の方向性の転換点を作る
2回目:終了の10~15分前⇒まとめ的な作業スタートのギリギリのタイミング
3回目:終了直前3~5分前⇒まとめ作業の巻きを入れる

このような節目で時間へのアラートを出す、ということを最初から決めておくとタイムマネジメントしやすくなります。

このような手順で紹介すると、「なんだ、ファシリテーター役をやるのか」という風に聞こえるかも知れません。その通りです。より正確にいうと、ファシリテーター的な振る舞いをする、と言えるでしょうか。つまり、議論の場では、
ファシリテーター的な振る舞いをする=リーダー的な振る舞いをする
なのです。

グループの中で、全員の力を合わせて、より創造的な結果を導こうと意識するのは、リーダーを置いて他にいません。そんなリーダーシップを、ファシリテーション的なアプローチで示すのです。でも、難しく考えずに、「プロセスにコミットする」というアプローチにぜひ挑戦してみてください。
このようなリーダシップ体験こそが、グローバルリーダーとしてのあなたの自信につながるはずです。
 

※関連イベント:11月9~11日に「英語で学ぶグローバルファシリテーション・ワークショップ」”SPOT on Facilitation in Japan Vol.4″を開催します。詳細はこちら

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