コラム

日本企業は“グローバル人材育成神経症”から解放されるべきだ【本音で語るグローバル人材育成 Vol.1】(2014.07.17)

グローバルファシリテーター吉岡英幸が、5回に分けて日本企業におけるグローバル人材育成のあり方を語ります。

 人材のボーダーレス化?日本人の国際化?

 

「グローバル人材」には2通りある。
・国籍を問わずに世界のさまざまな人材を活用するという意味のグローバル人材
・海外でも活躍できる日本人という意味でのグローバル人材

前者は人材リソースをグローバル規模で考えようという話で、後者は、人材の能力要件の話だ。実は、当社では10年以上前に「グローバル人材」をテーマにしたワークショップを1年間ほど実施していたのだが、当時「グローバル人材」と言えば、前者のとらえ方が主流だった。

海外で勝負していくためには、海外現地法人のマネージャーはどんどん外国人を登用し、日本においても国籍を問わない人材採用をしていこう。海外展開している企業なら取締役の半分は外国人であって当然。そうやって人材のボーダーレス化を図ろう。10年前からそんな議論を先進的な企業の人事担当者たちとしていた。今はこの分野でたびたびメディアに取り上げられる流通大手も、その頃から人材のボーダーレス化の明確なビジョンを描いていた。

そのさらにずっと以前より「日本人の国際化」という概念はあったのだが、「人材のボーダーレス化」が企業のグローバル化の柱になると10年前に感じていた。
一方、今語られる「グローバル人材」は、主に日本人の国際化を指す。なんとなく後退しているように感じるが、企業がどんどん国際化していくのに伴い、日本で働く日本人もそれに適応せざるを得なくなる、というのは理屈としてはわかる。

しかし、いろんな企業の人事の現場と議論していて、この“グローバル人材育成神経症”みたいなものが、よりいっそう企業における人材開発の方向性を惑わせているように思えて仕方ない。

それって純粋にスーパー人材の育成ですか?

 

日本企業が求めるグローバル人材像とはどのようなものか。よく言われるのが、以下の3つの要件だ

1.英語などの外国語が堪能
2.多様性を受容できる
3.異なる価値観を持った人間に囲まれながらも、自分を主張でき、協働のためのリーダーシップを発揮することができる

これは、グローバル人材ではなく、ゼネラリストとしてのスーパー人材だ。私は、リクルート時代、10年以上人材採用に関わってきたが、上記の要件は、1は特別として、すべての企業が求める理想の人材像だった。どんな大手企業でも、こんなスーパー人材ばかり集めることはできない。これらを理想形と置きながら、少しでも他社より優秀な人材を採用し、結果的に3~5%の人材がこのような属性のグループを形成できれば大成功と言える。

それにも関わらず、経営者はこのようなグローバル人材をいきなり数百人採用せよとか、全従業員の10%にしろ、とかいった無茶なオーダーを人事部に出してくる。人事部も心の奥底ではその矛盾を感じていながら、あえて経営者に疑問を差し挟まず、生真面目にオーダーを実行しようと奔走する。

もっと目的志向のグローバル人材育成論があってもいいのでは?

 

最近、企業の人事部の中期戦略を作成するファシリテーションのお手伝いをすることが多くなってきたのだが、あらゆる企業において、経営から人事部に課されるミッションの中で、もっとも多いのが「次世代リーダー育成」とこの「グローバル人材育成」だ。

私はファシリテーションの際に、そもそも会社としてのグローバルでのビジネス戦略はどのようなものか?その戦略のために必要となるグローバル人材の要件は何か?それは今人事部が考えているグローバル人材の要件とかみ合っているのか?を問いかけるのだが、明確な答えが返ってくることはほとんどない。

みな、前述したような3つの要件を挙げ、そのような人材を増やしていくことで、これから当社がグローバルなビジネスを拡大していくうえでの基盤を作っていくのだ、といった回答をする。
しかし、よく考えてみて欲しい。今までだってそのような優秀な人材を一人でも多く採用したい、育成したいと思ってやってきて、今が精一杯なわけだ。それを特に採用予算や教育予算が10倍とかになるわけでもなく、急に目標値を上げられても難しいのは目に見えている。

そもそも今の会社にそんな人がどれだけいるのか。口を開けば「今の若いもんは・・・」と言うマネージャーが、外国人の多様性を認められるわけがないし、英語は流暢だけど、コミュニケーション能力はまるきしダメという人も少なくない。
ロールモデルも何もないところで、10年かかってできなかった人材の質の底上げを短期間で迫られるのだ。

もちろん社会全体として、そのような人材を育成していくことは日本の将来を考えるうえで必要なことだと思う。しかし、企業の人事部はもっと目的志向で考えなければならない。
たとえば、「当社は、今後5年間は中国、インド、南米で大きく市場を伸ばしていく」といった具体的な方針があるのであれば、中国語に堪能な人材、インド文化が好きな人材、ラテン系のキャラクターの人材を優先的に採用する、という考え方もあるだろう。

また、IT系であれば、世界的にクラウドサービスを強化するためにインフラ分野のスペシャリストを育成する、というのもあるだろう。世界に通じる製品を開発するために研究者の質を徹底して上げる、という戦略もあるかもしれないし、どんどん新規に拠点を立ち上げていくので、法律に詳しい人材を徹底的に育成する、という選択肢もあるだろう。
そのように、ビジネスの戦略に照らし合わせて、各社のグローバル人材の要件を定義し、調達・育成の方針を考える、というやり方に改めるべきだ。

しかし、実際には経営者もそこまでグローバル戦略をブレイクダウンできていないし、人事部門もそのような議論を経営に対して仕掛ける知力を持っていない。
「そこに向けての取り組みをやっていますよ」ということを示す材料が提供できれば人事部としてはOKとなってしまう。
そして、とりあえずは、グローバル人材ならぬ、英語人材だけが増えていき、なんとなくグローバル化が進んでいるように見えてしまうのだ。

そろそろ、当社のビジネスにとってのグローバル化とは何かをちゃんと定義し、そのために必要なヒト、組織、マネジメントとはどのようなものか?これをじっくり考えることをやっていきませんか。それが、今回からの5回のコラムの趣旨です。

次回以降のコラムの予告

Voi.2 英語人材ではなく、地球的(グローバル)人材を育成せよ
Vol.3 日本企業はグローバルガナバンスという言葉を今スグ捨てるべきだ
Vol.4 日本企業はグローバルリーダーシップ研修を今スグやめるべきだ
Vol.5 管理職を半分以上減らす覚悟がなければグローバル化は唱えるなかれ

※関連イベント:12月9~11日に「英語で学ぶグローバルファシリテーション・ワークショップ」を開催します。詳細はこちら

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