コラム

グローバルファシリテーターが説く「ファシリテーションができるグローバルリーダーになろう」 第6回 英語マスターに必要なのは英語脳?日本語脳? 答えは脳内文法で英語を考えること

このコラムでは、プロのファシリテーターである私自身が、2年前から世界を舞台にグローバルファシリテーションに挑戦し、いろいろと試行錯誤ながら学んだことを、等身大で語っていきたいと思います。
 

英語脳?日本語脳?どちらで英語は考えるべき?

 
私自身、大変苦労している英語力の強化ですが、まず英語を自分の頭の中で、日本語で理解すべきなのか?英語で理解すべきなのか?という問題があります。
つまり、学校で習ったように、英語を聴いたら日本語に訳して理解し、英作文もいったん日本語で文章を作ってから英訳する、という思考の仕方か、英語はそのまま英語で理解し、英作文も英語で作る、という思考の仕方か、です。

実は、これについては、いろんな方がいろんな意見を言っており、やや英語脳派が多いのかなとは思いますが、日本語脳派の方のご意見もとても説得力があります。
私の結論ですが、これは、どちらでもないと思います。

英語でも日本語でもない、「脳内文法で思考する」が、仮説ではありますが、私なりの結論です。
いったいどういうことなのか。
 

人間は生まれながらに、言語処理をできるメカニズムが脳内にあるらしい

 

最近、人工知能についていろいろと学んでいると、さまざまな分野で新しい発見があるのですが、人間には、生まれながらにして、脳内で言語処理をするメカニズムみたいなものがあると言われています。
人間は、生まれてきて言語を修得することで、論理的な思考力を養うと一般的に考えられています。だから、生まれた国の言語によって、論理的な思考の仕方も異なると。

たしかに、日本人と英語のネイティブスピーカーの論理的な思考の仕方には違いがあるように思えます。
しかし、どの言語を母国語にするかに関わらず、もしかしたら言語を学ばなくても、人間は頭の中で言語体系みたいなものを持っているという考え方です。これを「脳内文法」、「脳内言語」などと呼んだりしています。

たとえば、私たちが本を読むときに、頭の中で声を出しているという人がけっこう多いでしょう。私もその一人です。

たとえば、
「そのとき、不意に彼の手が私の肩に触れ、私は少しだけ後ずさりした。」
などという文章の一説を読むときは、たしかに頭の中で自分の声が聞こえています。これなどはまさに「日本語で思考している」状態です。

一方で、
「今日は大雨だなあ。もしかしたらいつも使う電車は止まってるかも知れないし、バスで違う路線の駅まで行った方がいいかなあ。でも、それも歩く距離が増えるしイヤだなあ。」
なんてことを頭の中で考えたりすることがあります。この時自分は頭の中でのこのような日本語の文章を唱えているでしょうか。

文字にすると、たしかにこのような日本語になりますが、実際には、そのような意味合いのことを“考えている”のであって、決してこのような文章を頭の中で作文しているわけではありません。
つまり、日本語でも英語でもない、脳内言語で考えている状態だと思います。

Siriのように機械が話す言語は、機械の視点で見れば、数式であり、電気信号の流れです。実際に、人間が脳内言語で思考しているときは、映画「マトリクス」で出てくるソースコードみたいなものが、頭の中で走っている状態かも知れません。
 

記号と意味のセットを理解できるシンボルグラウンディング

 

人工知能の研究で重要なトピックとして、シンボルグラウンディング問題というものがあります。日本語にすると記号接地問題。なんだか日本語の方が意味不明ですね。

たとえば「ネコ」という記号に対して、「四足歩行でこれぐらいの大きさで髭があって・・・」という概念をセットで理解することが、コンピュータにもできるか?ということです。
コンピュータにとって情報は電気信号の流れなので、物事を細かく識別するのは得意です。電気信号の流れが1カ所違うだけで、異なる情報として認識されます。1分前の私と、現在の私は、電気信号で表すと、まったく別の個体として認識されます。

でも人間は、もっと大括りで物事を識別していきます。ネコ、人間、ナレッジサインの社長、といった風にです。

ネコとは何か?
人間とは何か?
ナレッジサインの社長とは何か?

という概念を明確にし、そこに「人間」、「ネコ」、「社長」と言った記号を割り当てます。これが言語のもととなるもので、これらを組み合わせて他者とコミュニケーションします。
ですから、人工知能が人間のように振る舞うためには、コンピュータにあらゆるものの概念と記号のセットを理解してもらわないといけません。
これがシンボルグラウンディング問題と言われています。シンボル(記号)と意味を接地させる、という意味です。

人間は「ネコとは何ぞや?」と問われて明確な説明ができなくても、ネコを見ればほぼ確実にネコと識別できます。でも、コンピュータにはちゃんと明文化して教えてあげないといけません。世の中のあらゆる概念をいちいちコンピュータに教えようとしたら大変ですよね。
それを自然と学習できるようにしようとするものが、機械学習や教師なし学習、と呼ばれるもので、最近の人工知能のブレークスルーになってきました。デイープラーニングもその一つです。

さて、人口知能的な雑学はここまでにして、英語の問題に戻ります。人間は記号と意味(概念)をセットで理解できると言いましたが、それもけっこう個人差があります。
たとえば、「戦略」と「戦術」という言葉。皆さん、なんとなく使い分けていると思いますが、その違いを明確に説明できますか?

私は、説明力・プレゼンテーションの研修を定期的に開催していますが、言葉の使い分けが上手でない方が非常に多いのです。

私自身、大いに反省するところがありますが、いろんな言葉を使い分けてはいるものの、それぞれの言葉の定義が曖昧であったり、使い分けが適切でなかったりすることがあります。
それぞれの言葉(記号)に対して、正しいかどうかは別として、自分なりに意味を明確に意識できているかどうか。これを仮にシンボルグラウンディグ力と呼びましょう。この力こそが、実は言語コミュニケーション力の源なのです。

日本語のネイティブスピーカーでも、言葉の定義が曖昧で、使い分けが上手ではない方は、何を言っているのかよくわかりません。
このシンボルグラウンディグ力を高めることが、英語だけでなく、外国語の上達には重要だと私は思います。
 

意味をちゃんと識別できるシンボルグラウンディグ力を高める

 

我々は英語を聴きとったり、英作文する場合に、日本語への変換、英語への変換という思考で考えますが、そもそもその意味を脳内文法で理解することが重要であると私は思うのです。

たとえば、下図のように、
戦略=Strategy, 戦術=Tactics
と、日本語と英語のセットをきちんと理解できるか?よりも、

日本語で戦略と言えば、「戦争に勝つための総合的・長期的な計略」の意味
日本語で戦術と言えば、「戦いに勝つための個々の具体的な方法」の意味
英語でStrategy,と言えば、「戦争に勝つための総合的・長期的な計略」の意味
英語でTacticsと言えば、「戦いに勝つための個々の具体的な方法」の意味

といった具合に意味の方をきちんと理解し、識別できているかが重要なのです。

symbol

日本語で言葉(記号)を聴いて、その意味を明確に頭に描いて、他の記号ときちんと識別できる人は、言語が変わっても、意味から記号へと結びつけるスピードが速いので、語学が上達しやすいのだと思います。

私自身、英語を学びながら気づくことが多いのですが、日本語では戦略・戦術のように「戦」といった共通の文字を用いた関連語が多くあります。そのような言葉は、多少使い分けを間違っても、一文字違いだから違和感が少ないのですが、Strategy, Tacticsのように綴りが全然違うと、見た目からしてまったく別物なので、違和感が大きくなります。
そんなときに改めて、この2つの言葉の違いは何だろう?と考えるのです。普段日本語を使っていて、あまり意識しない部分です。
そうして初めて、意味の違いを強く意識し始めるのです。

もしかしたら、英語脳で考える方が良い、という状態は、英語を学ぶことで、改めて真っ新な状態から記号と意味のつながりを意識するので、シンボルグラウンディグ力が高まり、実は脳内文法で思考することができているのかも知れません。

日本語脳で考えた方が良い、という方は、そもそものシンボルグラウンディグ力が高い方なのかも知れません。

私は、英語を本格的にトレーニングし始めてから、日本語が上達したように感じます。これは、日本語が上達したと言うよりも、記号と意味のセットをきちんと理解するシンボルグラウンディグ力が高まってきたのではないかと思っています。

皆さんも、脳内文法を意識して、シンボルグラウンディグ力を高めることで、英語力の強化に生かしていただければと思います。

※関連イベント:12月9~11日に「英語で学ぶグローバルファシリテーション・ワークショップ」を開催します。詳細はこちら

お気軽にお問い合わせください。TEL 03-3555-6901受付時間 9:30~18:30(土・日・祝日除く)

メールでお問い合わせはこちら

このエントリーを含むはてなブックマーク Buzzurlにブックマーク livedoorクリップ Yahoo!ブックマークに登録

このページの先頭へ