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「グローバル人材育成」の終焉 これからはグローバルリーダーシップではなく、グローバルフォロワーシップの時代

当社では、英語でファシリテーションできるスキルを身に付けるワークショップ、SPOTlight on Facilitationというワークショップを2016年から開催しています。これまでにオンライン含めた公開講座を12回実施し、企業内でも何社かで実施してきました。

過去参加いただいた方は、日本在住の外国人の方含め総勢100名以上になります。

なぜ、英語でファシリテーションか?シンプルに、日本在住のEnglish Speakerに日本で本格的なファシリテーションを学ぶ機会を提供したいという思いと、グローバル化していく日本のビジネスに合わせて、世界のいろんな場面で議論のリーダーシップを取るべき日本人に武器を授けたい、という思いからこのワークショップを始めました。

2010年以降、「グローバル人材育成」というキーワードが人材開発の現場でも主要な関心事になっていました。当社のビジネス的に言えば、成長する大きな市場に対して戦略的な商品を投入して、ビジネスを拡大したい、というのがありました。

しかし、結果として、ビジネス的に大きな拡大はありませんでした。そもそも「グローバル人材育成」という市場自体が成長しませんでした。いや、正確に言うと、「グローバル人材育成」という市場は想像上のもので、実際にはありませんでした。

ここからは、当社がグローバルファシリテーションを標榜した2013年から2020年現在の7年間で、私が実際に体験してきたことをもとに、「グローバル人材育成」というものの、私個人の見解を述べます。あくまで私の経験をベースにしていますので、実態と異なっていたとしたら、ご容赦願います。

「グローバル人材」に求められる役割も、コンピテンシー定義もはじめからなかった

私は、2008年から2017年ごろまで、さまざまな企業の人事部の方と、多様な人事課題について議論するラウンドテーブルのファシリテーションを定期的に手がける機会がありました。

時代の変化とともに、主要なトピックは毎年変わっていきましたが、2011~2015年ごろまで、「グローバル人材育成」が、大手企業の人事部の主要課題のベスト3に入っていました。

このテーマで、数限りない議論をしてきましたが、「それでは、グローバル人材の定義とは何ですか?」、「グローバル人材に求められるコンピテンシーとは何ですか?」と尋ねたときに、明確に答えられた企業は1社もありませんでした。今で言えば「デジタル人材」というキーワードで同じことが起こっていますが。

そんな状態ですから、グローバル人材育成のために何をするのか?も明確にはなりません。ビジネス英会話のトレーニングは今でも熱心な企業がありますが、その当時から、英会話以外に何をしたらいいのか?では、いつも議論が滞っていました。

私の考えるグローバル人材とは、海外のスタッフやパートナーなど多様な人材と協働し、多様性ゆえの困難さを克服できるリーダーシップを発揮して、チームとしてのパフォーマンスを最大化させる役割を担う人材のことで、必要なコンピテンシーの一つが、英語での議論をファシリテーションできること、でした。

ですから、英語でのファシリテーションのワークショップに熱を入れてきました。

グローバル人材がいたらいいなあとは願うが、本気でグローバル人材を育成することはやってこなかった

「御社のグローバル人材育成のために、英語でのファシリテーションワークショップへ参加させてください」と、さまざまな企業に熱心に売り込んでいきましたが、一番多くお聞きした断り文句は、「うちの社員はまだまだ英語で議論をリードするレベルじゃないんだよね」というものでした。

それは、国内の仕事だけをやっている人材の話ではありません。グローバルマネジメント何とかという部署名で、ITや人事や法務、営業など、海外の関連会社を統括し、実際に海外に出向いて、いろんな意見をとりまとめたり、プロジェクトを主導したりする立場の人材の話です。

実際にやっている仕事と、「そこまでのレベルではない」という役割認識に大きなギャップがあります。とても不思議な話に聞こえました。

しかし、実態を知るにつれて、企業のマネジャーや人材開発担当者がそういうのも理解できるようになってきました。

わかってきたのは、日本企業では、「グローバルでリーダーシップを取る」という仕事が求められていない、ということです。

例を挙げて説明します。ある企業のグローバルIT部門では、グローバルに共有すべきセキュリティポリシーというものを作り、世界のグループ会社にその徹底を浸透させるべく、グローバルガバナンス担当を海外の各グループ会社に派遣します。

英語が少しだけ話せるIT部員が、海外子会社に行ってグローバルのセキュリティポリシーを子会社のIT部門スタッフに説明するわけですが、そこで質問攻めにあって、上手に答えられずに、すごすごと日本本社に帰り、その後セキュリティポリシーを守らない海外子会社に対して、「本当に外国人は言うことを聞かないな」という愚痴を上司とシェアする、というのがオチです。

これに近いことが、グローバル何とか部門と言われる現場で現実に起こっていることです。

欧米系の企業であれば、ファシリテーション能力やネゴシエーション能力に長けたスペシャリストをグローバルガバナンス担当として職務に就かせ、海外での交渉に失敗したら、たいていクビです。

日本ではそんなことはありませんし、そもそも怒られません。「海外は難しいな」の一言で片づけられます。もっとも、グローバルでガバナンスできなくても大して問題もないところに一生懸命パワーを割こうとするのが、日本企業の特徴でもあります。

ただ、これらはホワイトカラーの話で、技術系では異なります。製造業などの品質管理は厳格にやらないといけませんから、技術のスペシャリトが海外に派遣されます。そしてリーダーシップを発揮するもっとも説得力の高いものが技術スキルです。専門職にとっての専門技術スキルは、それ自体がファシリテーション能力と言ってもいいでしょう。

ビジネスがどんどんとグローバル化しているのは間違いありませんが、それが「グローバルでリーダーシップを取れる人材を必要とする」とイコールとはならないのです。

ですから、グローバル人材がいたらいいなあとは願うが、本気でグローバル人材を育成する必然性もないのです。

突然あなたの上司は日本語を話さない外国人になる
これからはグローバルリーダーシップではなく、グローバルフォロワーシップの時代

それはこれからも変わらないでしょう。会社の海外売上比率が高くなったからと言って、あなたが海外に出張したり、駐在したりする機会は増えても、海外で外国人相手にきちんとしたリーダーシップを発揮することは、会社も求めないし、うまくできなくても、あなたのキャリアにはそんなに問題ありません。

しかし、現実的にはもっと可能性の高いグローバル化があります。それは、あなたの会社が海外の会社に買収されて、突然上司が外国人になることです。

今、日本企業のビジネスパーソンにものすごい勢いで起こっているのは、この状況です。私自身多くの企業で実例を見てきましたが、ついこの間までドメスティック感いっぱいだった企業が、ある日インドの会社に買収されて、あっという間に会社の中は外国人だらけ。部下の日本人はみんな小さくなって、居心地悪そうにしている、というのを見ます。

過去5年間で、そんな光景をたくさん見てきました。

日本企業がグローバルリーダーシップ育成に足踏みしている間に、グローバルフォロワーシップの時代が来てしまったのです。

それでは、グローバルフォロワーシップとはどういうものなのでしょうか。

世界は日本人が思っているほどInclusiveじゃない

日本企業に資本参加してくるような多国籍企業のトップに「Diversity & Inclusionの考え方を尊重するか?」と問えば、ほぼ100%「Yes」の答えが返ってくるでしょう。日本企業と比較して、外国企業では、Diversity & Inclusionの考え方がより浸透していると感じます。

つまり、ひとり一人の人材の多様性を重んじ、みんなを受け入れるという考え方です。

そう聞くと、なんだか安心する方も多いと思います。外国企業の文化になかなかなじめない自分は、多様性の一部として受け入れてもらえるはずだ、と。

私は、海外のいろんな方と接することで、外国人の言うDiversity & Inclusionの意味合いが、肌感覚で徐々にわかってきたのですが、それは、世界で言うDiversity & Inclusionは、日本人が思うほど寛容で、Inclusiveではないということです。

わかりやすく言えば、多様性を認めて、受け入れる対象は、彼らの基準で土俵の上に乗った人材だけなのです。そもそも土俵に乗らない人材は、多様だろうがどうであろうが、Includeする対象ではないのです。

たとえば、会議でずっと黙っている人材も、多様なキャラクターの一つととらえてもいいと私は思うのですが、外国企業では、仕事をしていない人として扱われます。

ファシリテーターが関与するやさしいワークショップなら別ですが、企業の会議では排除されるだけです。

ある外資系企業の研修でこんな声を聞きました。

「うちの会社では、実際にはいい仕事をしていても、それをアピールしないと評価されない。逆に、たいした仕事をしていなくても、アピール次第では評価が高くなる。人材活用という点ではもったいない話だ。」

私もそう思います。全然Diversity & Inclusionな感じではありません。そこは改善した方が絶対にいいでしょう。でも、それで回っている会社が多いのもまた事実です。

もし、そんな状況を変えたいのなら、自分で声を上げて変えていくしかありません。

基本的に世界は、Speak upする人たちで回っているのです。Speak upする人たちが土俵の上に乗っている人たちであり、Diversity & Inclusionの対象なのです。

理想と現実は違います。

10秒以内で自分の意見を言えるようにする

では、グローバルフォロワーシップとして、何を身に付ければよいのでしょうか。英語はできた方がいいに越したことはありませんが、必ずしも必要ありません。積極的なリーダーシップも必要ありません。

それよりも、必要なことは、

・物事に対して常に自分の意見を持つ
・自分の意見を簡潔に使える言葉を磨く
・自ら手を挙げて発信する

なのですが、これが日本人には高いハードルなのです。グローバルリーダーシップも、グローバルフォロワーシップも、結局ハードルの高さは変わりません。

一つだけシンプルで有効なアドバイスをします。日本人が、上記の3つの壁をなかなか乗り越えられない要因の一つは、「長く話そうとする」からです。

10秒以内でいいです。とにかく、10秒以内で自分の意見を言えるようにしましょう。どんなときも、人々に響くメッセージはシンプルで簡潔です。

「ひと言は10秒以内」というのを、ぜひ、今日から自分の中でルール化してください。いつグローバルフォロワーシップが必要になるかも知れませんし、簡潔に話せる力は、コミュニケーションにおける最強の武器です。

例外なくこのルールを当てはめて、常に10秒以内を意識してください。長い時間のスピーチであっても、一つの文は10秒以内で構成するようにするといいでしょう。

もし、あなたが自分の意見を、自分の言葉で、簡潔に言えるようになれば、あなたがフォローするのは、外国人上司ではなく、成長したあなたの未来になるでしょう。

(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)

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