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ビジネス英会話教室が、グローバルリーダー育成を阻んでしまう理由 “グローバル人材育成なら英語でファシリテーションでしょ?” Vol.11

多くの日本企業が、グローバル人材、グローバルリーダーを育成しようと、企業内教育にたくさんのコストや手間暇をかけています。では、実際にどんな教育が実施されているのかというと、私の感覚値では、90%が「ビジネス英会話教室」です。

2016年から、英語でファシリテーションのワークショップ開催をスタートし、グローバルリーダー育成マーケットに本格的に参入して、さまざまな企業のグローバルリーダー育成担当者、あるいは、大手企業で実際に海外と関わる仕事をしている人たちと、たくさん接してきて、グローバルリーダー育成の現場で共通している2つの点があることがわかりました。それは、

1.そもそもグローバルリーダーのコンピテンシーが明確化されていない
2.教育のほとんどは、ビジネス英会話教室である

ということです。

日本企業におけるグローバルリーダーのコンピテンシーとは、「外国人に囲まれて会議をしたときに、ずっとうつむいて黙ったままではなく、せめてひと言ぐらいは発言できるようになること」

1のコンピテンシーについてですが、グローバルリーダー育成担当者が共通して言うことは、「英語だけではない」ということです。もちろん、それにはアグリーですが、では、英語だけではない部分が何か?という問いに明確な答えが返ってくることは稀なのです。

一般には、よく、コンピテンシーとして以下のようなものが挙げられます。

・多様性を受け入れるマインドセット
・どんな場面でも自分自身を表現できる自己表現力
・論理的に思考して、説得力のある話のできる対話力

英語以外のコンピテンシーを少しは具体化した感がありますが、たとえば、「多様性を受け入れるマインドセット」がある状態とは、具体的にどのような状態を指すのか、具体的なシーンでイメージできていません。また、レベル感もありません。

コンピテンシーは、職務における適格性ですから、価値の種類とレベル感が必要です。

現実的に、今日本企業で求められている、グローバル人材のコンピテンシーを、実態に照らし合わせて正確に表現するとしたら、

「外国人に囲まれて会議をしたときに、ずっとうつむいて黙ったままではなく、せめてひと言ぐらいは発言できるようになること」

ということになるでしょうか。

ですから、教育の内容も、ビジネス英会話教室になってしまうのです。

ビジネス英会話教室のメリット 実は文化的な背景も学べる

実際には、自社のグローバルリーダー育成教育を「ビジネス英会話教室」と呼んでいる企業は、多くありません。実態として、私がそう呼んでいるだけで、多くの企業では、「グローバル人材育成クラス」とか、「英語でのビジネスコミュニケーション研修」とか、そのような呼び方です。

私が言う、「ビジネス英会話教室」的な実態とは、大きく以下の2つで、

・基本的には英会話力を向上することが目的になっている
・英語の学習領域が、ビジネスで使う用語、表現にフォーカスされている

つまり、先に挙げた、一般的なコンピテンシーである、多様性を受け入れるマインドセット、自己表現力、論理的な対話力といった領域はカバーしていないのです。

それでも、グローバルリーダー育成の基礎として、ビジネス活用に特化した英会話力をアップすることは、有効だと考えています。

多くのビジネス英会話教室では、たとえば、会議で使う英語などを学ぶ際に、英語圏の方と、日本人の会議に臨む姿勢の違いなども教えてくれますので、文化的多様性を学べる要素がけっこうあります。

また、ビジネスで使う英語表現を知ることで、英語圏のビジネス上の文化を知ることもできます。

たとえば、日本では、「責任を持っている」、「責任を取る」という、いずれの場合も「責任」という言葉が使われます。

でも、英語では、

「責任を持っている」の「責任」は、Responsibility

「責任を取る」の「責任」は、Accountability

と使い分けします。冷静に考えてみると、責任を持っている人みんなが潔く責任を取っているわけではないので、言葉を使い分けしていることに合点がいきます。

(ちなみに、日本では、Accountabilityが「説明責任」と、狭義の意味で使われることが定着していますが、これは、「説明さえすれば責任を取ったことにしよう」という勢力が、そのように広めた陰謀ではないかと、勘繰っていまいます。)

「ビジネス英会話教室」最大のデメリットは、英語力によるヒエラルキー意識を刷り込んでしまうこと

では、ビジネス英会話教室のデメリットとは何でしょうか。最大のデメリットは、英語力によるヒエラルキー意識を刷り込んでしまうことです。

どういうことか説明しましょう。

ビジネス英会話教室では、英会話力にフォーカスするため、どうしても教室内で、ボキャブラリーが豊富、リスニングができる、発音が良い、話すのが滑らかで速い、と言った、いわゆる英語力の高い人が評価されます。

あからさまに評価されなくとも、「ああ、あの人よりも自分が上、下」と、英語力によるヒエラルキーを否応にも意識してしまいます。

自分より英語力の高い人の方が、英語を使った仕事でより高いパフォーマンスを発揮できるはずだ、という意識が徐々に刷り込まれていくのです。

逆のケースは、とてもいいことだと思います。英語は得意だけど、普段、仕事であまり評価されていない人が、会社のビジネス英会話教室で、得意な英語で目立って、ヒーローになった気分で自信を持ち、仕事でも成果を出せるようになる。こういう意識の転換は、極めて歓迎すべきことです。

一方、自分の英語力が他者よりも劣ると感じると、自分より英語力が高い人以上に、英語を使って何かを頑張ろう、大胆になろう、という意欲が沸いてこないのです。

私より英語が上手なあの人でさえ、英語の会議であまり発言しない、私なんか、とてもじゃないけど、発言できない、といった具合に。

私が主催する「英語でファシリテーション」を学ぶワークショップ(SPOTlight on Facilitation)では、英語でファシリテーションするぐらいだから、さぞかし英語力のすごい人ばかりが参加しているものと思われるかも知れませんが、「その英語力でここに参加した勇気にまずは乾杯!」と言ってあげたくなるような、英語力という点では、ちょっと??な方が参加されるケースも少なくありません。

でも、意外なことに、そんな参加者が、他のNative English Speakerの参加者をうまく巻き込み、議論の中心になって、場を盛り上げたりするのです。それは、その人の持つ、英語力以外の、コミュニケーション力だったり、マインドだったり、人間力のようなものが、そのような成果を引き出すわけです。

それが起こるのは、このワークショップでは、英語にはフォーカスしていないからです。もちろん、英語をずっと使い続けながらワークショップを進行していくのですが、あくまでフォーカスしているのは、ファシリテーションスキルの修得です。

英語にフォーカスしないことで、そのような、英語力以外の能力をうまく引き出して、英語でのコミュニケーションを成功させるという、逆転現象みたいなことが、起こり得るのです。

そのようなことは、英語にフォーカスしたビジネス英会話教室では、滅多に起こりません。受講者のマインドもパフォーマンスも、英語力のヒエラルキーにぴったり比例しがちです。

ですから、もしかしたら、人間力みたいなもので、英語でのコミュニケーションを成功させることができる可能のある人も、そんなチャンスを見つけられないのです。グローバルリーダーが生まれるチャンスが摘まれていると感じます。

段階的に英語力を高めて、自信と実力をつけていくことは重要だとは思いますが、スピードが要求されるビジネスの現場では、何か新しい能力を開発するためには、着実にステップを踏むのではなく、階段を2段、3段ワープしたA-ha体験のようなものが、どうしても必要になることがあります。

ですから、英語を使いながらも、英語にはフォーカスしていない、他のものにフォーカスする教育こそが、グローバルリーダー育成には必要だと思うのです。

(株式会社ナレッジサイン グローバルファシリテーター 吉岡英幸)

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