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2016/10/16 ~AIの研究アプローチをファシリテーションに応用~ IAF アジアカンファレンス2016 in 台湾 ワークショップレポート PART2 「ファシリテーターのセンサーはどう働くのか?」

2016年9月に台湾は花蓮市にて、世界のファシリテーターの祭典、IAFアジアカンファレンス2016が開催され、弊社代表吉岡英幸が、日本人ファシリテーター3名と共同でワークショップのファシリテーションをしました。
IAF(International Association of Facilitators)は、世界のファシリテーターをネットワークしているワールドワイドな組織で、アジアカンファレンスは、アジア含め世界各国のファシリテーターが集まり、世界で活躍するプロフェッショナル・ファシリテーターの最新メソッドやワークショップを体験できる、言わば世界のファシリテーターの祭典です。

本年度は、台湾の東海岸に位置するリゾート地である、花蓮で4日間にわたり計40のワークショップが開かれ、世界からさまざまなファシリテーターが最新のファシリテーションのメソッドを用い、ワークショップをファシリテーションしました。

弊社代表吉岡英幸は、日本人ファシリテーター3名とチームを組み、AI(人工知能)の研究アプローチをファシリテーションに応用したワークショップを実施しました。
タイトルは、以下の通り。
Cognition in Facilitation process
How does the facilitator’s sensor work?
Making perfect facilitator Robot Episode Ⅰ

ファシリテーター:
Tomohide Oshima
Eri Kagamiyama
Yusuke Katayose
Hideyuki Yoshioka

taiwan2
ファシリテーターにとっての「認知」とは何か?を体感しながら学ぶワークショップです。

 

ファシリテーターは、動的な情報をどのように認知するのか

 
前半のワークでは、写真を見て何を認知するのか、をシェアしましたが、後半のワークでは、3分間の実際の議論を観察してもらい、何を認知したのかをシェアしました。

人工知能の認知においても、写真・画像という「静的情報」に対して、動画のような「動的情報」を、どう認知するかというのは、重要な研究テーマです。

このワークの目的は2つあります。
・まずは、動的な情報がどのように認知されるのか、ファシリテーションという目的を例に、簡単にモデル化すること。
・そして、もう一つの目的は、情報の時間的な変化の中で、ファシリテーターの認知の仕方がどう変化するのか、そこにファシリテーターの個性というものが、明確に表れるのではないか、という仮説を検証していくことです。

最近では、人工知能による画像認識のレベルが高くなっています。人工知能に猫の画像を数千万枚見せるだけで、「これが猫の画像だ」と正解を教えることなく、猫の画像を他のものと識別できるようになってきました。
一方で、動画の認識ということになると、視覚情報だけでなく、音声情報など、知覚対象が増え、さらにそこに時間的な変化という概念が加わり、処理すべき情報が複合的になります。
認知の対象も、個体の識別だけでなく、状況の認識、変化の認識など、複雑になります。

たとえば、「笑う」という状況は、笑っている場面を静止画として切り取って見た場合、果たして笑っているのか、怒っているのか、判断がつきにくい場合がありますが、これが動画になると、時間の経過に伴う顔の表情の変化、笑い声などの音声情報も加味して判断することで、「笑っている」と認知されます。

ファシリテーションの場合でも、ある一瞬だけを切り取って観察すると「対立している」と見える状況が、時間の経過に伴って観察していると、「強い信頼関係で結ばれている」と見えることもあります。

時間の変化に伴う情報の変化は、観察者が状況を判断するために必要な情報を、より豊富に与えると同時に、観察者にバイアスを提供することもあります。

人が同じ対象を連続的に観察しようとするとき、認知のプロセスは、以下の図のように短い時間の中で無数のサイクルが回っています。何かに注目して、なんらかの解釈をすると、次の瞬間には、その解釈が前提となって、新たな解釈をするようになります。

CognitionCycle

 

情報取得の段階で働くセンシング・バイアス

 
たとえば、4人の人物が話している状況を観察ときに、Aという人物が、議論の内容に不満を持っていると解釈したとします。そうすると、しばらくの間、「Aが不満を持っている」という前提で、4人の状況を観察しようとするので、もしかしたら、「不満の表れ」と解釈できそうなAの所作に注目するかも知れません。

個人や集団の持つ固定観念などが、判断に影響を及ぼすことは、認知バイアスとして知られていますが、この認知バイアスのもっと瞬間的なもの、情報を分析して判断する前の、そもそも何に注目するか、という情報取得の段階で働くバイアスを、我々は「センシング・バイアス」と名づけました。

個人によって、センシング・バイアスは異なります。つまり、センサーの働き方の違いが個人によって異なり、これが、ファシリテーターの個性となっているのではないか、というのが我々の仮説です。

そこで、ワークショップの後半では、時間の経過に伴って、どのように解釈が変化していくのかを比較するワークを行いました。

具体的には、4人の人物が、あるテーマについて連続的に議論する場面を2つ用意しました。シーン1は前半の議論。シーン2は、同じテーマについて、シーン1の続きとして交わされる議論。それぞれ3分間の議論です。

ここで検証することは、以下の2つです。
1. 各ファシリテーターは、実際の議論の場面のどこに注目して、どのように解釈するか
2.シーン1で解釈したことが、シーン2に影響するのか

シーン1とシーン2の解釈の関連性を検証しやすいように、我々は解釈のパターンをそれぞれ4通りにしました。

シーン1では、4人のうち「誰が議論の進行にもっとも不満か?」
シーン2では、4人のうち「誰がこの後の収束にもっとも貢献しそうか?」

このように、解釈を4択のパターンにすることで、互いの認知の違い、シーン1からシーン2にかけてのセンシング・バイアスの違いをわかりやすくしました。
つまり、下図のように、シーン1の解釈がシーン2を観察するうえでの前提になるかどうかを見るのです。
これは、人間の脳が、常に一瞬先を推定し、次の瞬間には、その推定が前提となって、次に推定することの確率を変動させているのと同じモデルと言えます。

sequence

 

ファシリテーターは、認知対象×時間のマトリクスで認知しようとする

 
このワークを通してわかったことは、ファシリテーターは、動的情報を認知しようとするときに、PART1で紹介した認知対象「個人」、「関係性」、「内容」以外にもう1つの軸、「時間」で認知しようとしていることです。
この場合の時間は、「現在」、「過去」、「未来」です。
つまり、ファシリテーターの認知は、「個人」、「関係性」、「内容」×「現在」、「過去」、「未来」の9象限のマトリクスで表されるのです。

9matrix

たとえば、
「Aは議論の状況に不満を持っている」
というのは、「個人」×「現在」に対する認知

「4人のメンバーは信頼し合っている
というのは、「関係性」×「過去」に対する認知

「収束のポイントがもうすぐ明らかになるだろう」
というのは、「内容」×「未来」に対する認知

ファシリテーターの動的情報に対する認知は、おおよそこの9つのマトリクスのいすれかのゾーンに当てはまります。そして、ワークショップの各参加者によって、どのゾーンにシフトしているのか、という傾向も分かれました。

これこそが、一人ひとりのファシリテーターのセンサーの働き方であり、ファシリテーターの個性なのです。
ファシリテーターが自分の個性を生かしながら、コンピテンシーを高めていくためには、まず自分の個性を知ることが大切であり、そのためは、自分自身のセンサーの働き方を知ることが重要です。

ファシリテーターとしてのセンサーの働き方を知ることで、センサーを適切にコントロールできるようになり、より高いレベルのファシリテーションを実践することができるようになるでしょう。
 
※IAF アジアカンファレンス2016 in 台湾 ワークショップレポート PART1「ファシリテーターにとっての認知とは何か?」はこちら
 
※関連イベント:12月9~11日に「英語で学ぶグローバルファシリテーション・ワークショップ」を開催します。詳細はこちら
 
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸)

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