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4.112018

「ファシリテーターにとっての認知とは何か?」~AIの研究アプローチをファシリテーションに応用~ IAF アジアカンファレンス2016 in 台湾 ワークショップレポート PART1 

2016年9月に台湾は花蓮市にて、世界のファシリテーターの祭典、IAFアジアカンファレンス2016が開催され、弊社代表吉岡英幸が、日本人ファシリテーター3名と共同でワークショップのファシリテーションをしました。
IAF(International Association of Facilitators)は、世界のファシリテーターをネットワークしているワールドワイドな組織で、アジアカンファレンスは、アジア含め世界各国のファシリテーターが集まり、世界で活躍するプロフェッショナル・ファシリテーターの最新メソッドやワークショップを体験できる、言わば世界のファシリテーターの祭典です。

本年度は、台湾の東海岸に位置するリゾート地である、花蓮で4日間にわたり計40のワークショップが開かれ、世界からさまざまなファシリテーターが最新のファシリテーションのメソッドを用い、ワークショップをファシリテーションしました。

弊社代表吉岡英幸は、日本人ファシリテーター3名とチームを組み、AI(人工知能)の研究アプローチをファシリテーションに応用したワークショップを実施しました。
タイトルは、以下の通り。
Cognition in Facilitation process
How does the facilitator’s sensor work?
Making perfect facilitator Robot Episode Ⅰ

ファシリテーター:
Tomohide Oshima
Eri Kagamiyama
Yusuke Katayose
Hideyuki Yoshioka

taiwan1
ファシリテーターにとっての「認知」とは何か?を体感しながら学ぶワークショップです。

ファシリテーションとAI(人工知能)の接点は?

今回のワークショップの特徴は、最新のAI(人工知能)や認知科学の研究アプローチをファシリテーションに応用したことです。
ナレッジサインでは、AI(人工知能)を活用して、ファシリテーターができるロボットを作る “Project Making Perfect Facilitator Robot”を2016年より始動しています。まだまだ概念研究段階ですが、その最初のステップとして、ファシリテーションというものを工学的に概念整理しようとしています。
今回は、ファシリテーターにとっての認知とは何かを、認知科学的な視点でとらえようとしており、このワークショップは、その実験的な意味合いを含んでいます。

人間の認知行動は、以下のプロセスで知られています。

CognitionProcess

対象を、視覚、聴覚、嗅覚などの知覚で認識し、どのようなものかを判断する。そして、対象に対してどのようなアクションを取るのか意思決定し、結果を評価して、学習します。

ファシリテーションに置きかえて見れば、議論の場にいる人や、人の配置、その場で交わされる言葉、人の動きなど、あらゆるものを注意深く観察し、議論がどのような状況か判断し、ファシリテーターとしてどのように介入するのか、あるいは、介入せずにただ静観するのかを意思決定し、行動の結果を自分なりに評価します。

ファシリテーションプロセスにおいて、我々ファシリテーターは、このような観察⇒判断⇒行動⇒評価⇒学習を短いサイクルで無限に重ねながらファシリテーションをしているのです。

ここで素朴な疑問が沸き上がります。
複数のプロのファシリテーターがいたとして、同じ議論の場面を観察したときに、プロのファシリテーターは、誰もが同じような状況の解釈をするのか?

たとえば、怒号を交えたののしり合いのシーンを見れば、「明らかに対立が起っている」と、誰もが認識するでしょう。このように、非常にわかりやすいシチュエーションでは、状況の解釈は違わないでしょう。
しかし、ちょっと微妙なシーン。みんなが納得しているような、していないようなシーンではどうでしょうか?どんな行動を取るか以前に、状況の解釈自体が、観察する人によって大きく変わるかも知れません。

実は、我々も誰かと組んでコ・ファシリテーションをすることがあるのですが、議論の各場面において、何を観察し、どのように状況を解釈したのかを、コ・ファシリテーターと細かく確認することはありません。結果として議論がうまく進めばいいので、細かく確認する必要は必ずしもないのですが、実際には、微妙な解釈の違いが生じていると考えられます。

ファシリテーターロボットを作るためには、これらファシリテーターにおける認知の仕方を細かくエンジニアリング的に解明しなければなりません。
また、このように深堀りしていくことは、我々プロのファシリテーターでさえ、気づかないうちに犯してしまっているかも知れない、認知バイアスによる誤ったファシリテーション行動に気づかせてくれる可能性があります。

AI(人工知能)や認知科学の研究アプローチを取り入れることで、
—ロボットづくりおける科学的なデータを得る
—ファシリテーター自身が気づいていない自分の行動特性に気づく

という2つの目的を果たすのが、このワークショップのねらいです。

同じ場面を見ても、どう解釈したか?は一人ひとり異なる

ワークショップの最初のワークでは、4人の人物が何か議論をしているように見える写真を見てもらい、ワークショップ参加者に

—どこに注目したか?
—どのように解釈したか?

という質問を投げかけました。

picture2

写真に登場する4人の人物にA~Dと名前をつけ、たとえば
—どこに注目したか?⇒Aが笑っている
—どのように解釈したか?⇒Aは他の3人を信頼している

といった具合に、人やモノ、配置など、自分が注目したものと、それによってどのように解釈したのか?を自分が感じたままに答えてもらうのです。
まずは、写真を見ながらこの2つの質問に答える個人作業に取り組み、その後で、結果をグループ内でシェアしました。
その結果わかったことは、ファシリテーター一人ひとりが、どこに注目するかが異なり、さまざまな着目点があるということ。そして、同じところに注目しても、解釈の仕方は人それぞれであるということでした。

たとえば、
同じ「Aが笑っている」ということに注目した場合でも、
—Aは議論を楽しんでいる
—Aは、話し手であるDに気を使っている

と解釈はさまざまです。

あるいは、Cという人物に注目する場合でも、
—Cがノートを取っている
—Cが下を向いている

と、どこに注目するかで、
—Cがノートを取っている⇒Cは議事録を取ることで積極的に議論に貢献しようとしている
—Cが下を向いている⇒Cは議論に不満を持っている

と解釈が異なってきます。

work1

実際のファシリテーションでは、議論の目的や議論の参加メンバーの背景情報などが事前に与えられており、さらには動きのある議論、実際に話している内容を見たり聞いたりしながら判断するので、このように、音声情報のまったくない写真だけを見て判断するような状況はないのですが、視覚的な情報の一断面を切り取って見た場合、このように「何に注目するか」、「どう解釈するか」は、ファシリテーターによって大きく異なってくることがわかります。

もちろん、ファシリテーター、一人ひとりに個性がありますので、ファシリテーターが変わればプロセスも、結果も異なります。言い換えると、ファシリテーターの個性とは、このような認知の仕方の違いから生まれてくるのかも知れません。

ファシリテーターの認知の対象は「個人」、「関係性」、「内容」

このような認知の仕方の違いはどこから生まれてくるのでしょうか。
参加者の議論からは
「自分の今関心のあるものに注目する傾向がある」
「自分はファシリテーションする際に、常に関係性に注目していることに気づいた」
と言った声が聴かれました。

ここから、ファシリテーターの認知の対象とは
・個人
・関係性
・(議論の)内容
という概ね3つに分かれることがわかります。

次の図のように、視覚情報から認知をする場合、多くは個人の表情や、所作など、人物に関する観察がメインですが、そこから読み取れるものは、個人のキャラクターや思いだったり、関係性だったり、議論の内容の推察であったりします。

objects

そして、この3つのどこにシフトしているかによって、ファシリテーターの個性が表れてくるようです。実際にワークショップの中でも、認知の対象が3つのうちのいずれかに集中している参加者が多いようでした。

物事の観察には既に推定が含まれている

—どこに注目したか?
—どのように解釈したか?
というプロセスで認知を考えた場合、
「どこに注目したか?」は、客観的な事象の観察であるべきなのですが、実際にはそうではありません。なぜなら、人間の認知とは基本的にすべて推定だからです。

たとえば、
—Aが笑っている
というのは、客観的な事象とは言えません。正確な観察情報は、
—Aが口角を上げて口を開いている
—Aが歯を見せている
ということであって、Aが本当に笑っているかどうかは、第三者にはわからないからです。あくまで「Aが笑っているように見える」という推定なのです。

何かを観察するときに、観察対象に対して、既に推定が入るのは人間ならば当然のことですが、できるだけ客観的な事象をとらえようとする人と、常に推定しながら観察をする人に傾向が分かれるというのも、新しい気づきでした。

まだ、このワークショップを多数のファシリテーターに対して実施したわけではないので、有効なサンプル数は少ないのですが、ファシリテーターは常に先の展開を考えながら作業する職業なので、どちらかというと推定気味に物事を観察するファシリテーターの方が多いのではないかという仮説を私は持っています。
これについては、今後ぜひ検証していきたいと思っています。

※IAF アジアカンファレンス2016 in 台湾 ワークショップレポート PART2 「ファシリテーターのセンサーはどう働くのか?」はこちら

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