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次世代IT基盤のロードマップを考える研究会
〜クラウド新時代に向けて今IT部門がなすべきこと〜 第4回
テーマ 〜IT基盤再整備どこまで手をつけますか?〜
IT基盤再整備のスコープを考える
日 時 2010年 1月29日 
参加者 ITインフラの再整備について考える企業の情報システム部門リーダー 6名
主 催 TIS株式会社
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸
 TISでは、情報システム部門のリーダーが、自社のITインフラにおける課題を共有し、いずれ本格化する「クラウド・コンピューティング」の時代にむけて、あるべきITインフラの姿や、IT部門が今なすべきことについてディスカッションする『次世代IT基盤のロードマップを考える研究会』を2009年9月に発足いたしました。

第4回となる今回の研究会では、「IT基盤再整備のスコープを考える」をテーマに、「どのシステムを再整備の対象とするのか」、また、対象となるシステムに対し、「どこまで再整備を進めていくのか」という再整備の範囲について、各社の取り組みを共有し、IT基盤再整備というプロジェクトのスコープについてディスカッションいたしました。本レポートではその議論の一部をご紹介いたします。

◆IT基盤の概念と再整備の対象
 一口に「IT基盤再整備のロードマップ」と言っても、企業によって再整備の対象・範囲も異なれば、「IT基盤」としてどこまでを含めて考えるのか、また、「ロードマップ」をIT基盤戦略上、どのようなものとして位置づけているかも異なる。

 まずIT基盤の概念としては、参加者の多くがハードウェア、OS、ミドルウェアまでのレイヤーをIT基盤と考えていた。一方、アプリケーションのアーキテクチャまでもIT基盤とする考え方もある。

 IT基盤の再整備というときにもっともベースとなるハードウェアであるが、研究会に参加するある企業では「現在、自社で保有しているすべてのIAサーバーを仮想化によって統合すること」を再整備の概念としてとらえていた。

 この企業にとって、サーバー統合の大きな目的はコスト削減である。通常仮想化によるサーバー統合で期待されるコスト削減効果は、物理的なサーバー台数を大きく減らすことだ。しかし、この企業では、OSイメージ数の削減を期待してはいるものの削減効果は5%程度だと言う。この企業がもっとも期待しているのは、「運用コストの削減」である。

 現在、この企業では、サーバーの運用を外部ベンダーにアウトソースしている。そして、このアウトソースサービスでは、運用を細かな項目に分け、その項目ごとに単価を設定しているとのことであった。「各運用項目について棚卸しを行い、何百行というレポートで管理している」(研究会参加企業)。

 ブレードサーバーを用いてサーバーを仮想化することで、運用に関わる工数を細かく削減し、アウトソースのコストを下げることが目的である。

 運用の工数もIT基盤の一つに含めた、IT基盤整備の考え方と言えるだろう。

◆システムのライフサイクルマネジメントの視点からのロードマップ
 「ロードマップ」という概念についても2つの視点がある。「IT全体のあるべき理想の姿」をゴールに描き、そこに到達するための道筋を示すロードマップと、今現在を起点に、ITに起こり得るイベントを予測してどのような対策を打つか計画する、つまりシステムのライフサイクルマネジメントとしてのロードマップ。

 研究会に参加していたある企業では、ハードウェア、OS、ミドルウェアといったIT基盤における今後5年間の業務的なイベントや、保守切れなどのシステム的なイベントを時間軸に置き、予測される問題とその問題を回避するための対策をロードマップとして描いている。 

 そして年に2回、このロードマップを見直し、再整備が必要な領域があれば、プロジェクトを立ち上げ、問題を回避する動きをしていると言う。

 「このロードマップがあれば、いつがリミットで、それに対応するための期間がどのくらいあり、いつから着手しなければいけないかが決まる。そうすれば取り組むべき優先順位も自ずと決まってくる」(研究会参加企業)。

 「現状から予想される将来」をロードマップに記し、問題を可視化することで、システムを「理想の姿」とするために、いつまでに、何をしなければならないかが見えてくる。「意思決定のために必要な情報を可視化し、明確化することが、まさにロードマップの役割」(研究会参加企業)であると言える。

 また、研究会に参加していたある企業では、全体を包括したロードマップではなく、基盤やアプリケーションなど要素ごとに数年タームのロードマップを描き、経営からの策定方針に沿って、3〜4年の「情報システム戦略」をつくっていた。要素ごとに構想されたロードマップと経営からの要望を兼ね合わせて、3〜4年という中期でセキュリティ強化やグループウェアの移行など、重点的に取り組むべき課題を明確にしていると言う。

◆IT基盤再整備としての標準化
 IT基盤を整備するというとき、それは標準化という概念と重なることが多い。システムのオープン化によって業務部門主体で素早くシステムを立ち上げることが可能になったが、その結果、基盤からアプリケーションまで個別最適なシステムが増大し、技術の分散と運用工数の増大で逆にシステムの調達時間が長時間化してしまうという皮肉な現象がどの企業にも起こっている。

 研究会に参加していたある企業では、それまで業務部門主体でシステムを構築していたのを、「IT基盤戦略」という5ヵ年戦略を作り、ITのガバナンスを本社システム部門に集中させた。サーバー統合によって技術の集約を行い、「標準設定」を設けることで、新しくサーバーを導入する際に金太郎飴状態を保持し、運用工数も削減している。

 標準化を進める際には、どのような技術を技術標準とするか決めることと、標準を守らせることが必要だ。

 ある企業では、業務部門がアプリケーションを作った際に「サーバーのリソースが足りない。リソースもっと増やせないか」といった要望が後から発生することがある。そこで、「非機能要件」と呼ぶチェックリストを作り、アプリケーションの設計段階でチェックをしているという。既存のシステムであれば、どのような影響を及ぼすのか、また、新規で作るのであれば、標準化に沿ってどのようなアプリケーションを使うべきなのかといったことをチェックし、コントロールを強化しているのだ。

 また、基盤整備には「コスト配賦の見直し」という概念もある。ITのガバナンスを中央集権で強化し、予算も一元化した場合に、業務部門に対してどのようなロジックで費用配賦するかである。

 仮想化によるサーバー統合を進めて統合基盤を構築した場合、同じようなシステムの立ち上げであっても、単純にタイミングによって投資額が異なることがある。たとえば、仮想化OSの領域が余っていれば、そこに別OSを1個立てるだけでサービスが開始できる場合もある一方で、タイミングによっては、リソースがないため、新しくブレードサーバーを増設するなど先行投資をしなければいけない場合もある。それを単純にシステムの投資額で費用配賦することによる不公平感が生じているケースが紹介された。
◆本社だけか、グループ全体か、グローバルか
 スコープという意味では、IT基盤再整備の対象を本社のみとするのか、グループ全体なのか、グローバルレベルで考えるのか、も重要なポイントだ。グローバルで事業展開をしているある企業では、国内だけではなく海外の拠点も再整備の対象に、現在、ロードマップの策定に取り組んでいるとのことであった。

 この企業では、まず「グローバル各社のIT基盤の調査を行い、現状の把握」を行った。「以前はどこに、どのシステムが、どれだけあるかが把握できていなかった」。しかし、現在では「おおよその情報は把握しており、イントラネット上で故障回数や担当者などの情報が得られるようにしている」のだと言う。

 そして、サーバーの統合について取り組みを始めたところであるが、「各地に拠点が多数あり、中には現場になければならないシステムも少なくない」と言う。「統合するにしても、現在拠点で動いているアプリケーションのテストなどには時間もかかる。サーバーの統合は時間をかけてじっくりと進めていきたいと考えている」とのことであった。

 具体的には、まず、本社で、統合ができる環境を整えた後、拠点で運用できなくなったシステムから少しずつ受け入れていき、「その後になってからコスト負担についても議論をしていく」という計画を考えているとのことであった。

◆「将来の無資産化」をゴールに見据えたロードマップ
 先ほど、システムのライフサイクルマネジメントの視点から、現状を起点にしてのロードマップについて紹介したが、システムのライフサイクルを描いていく中で、将来のめざすべきゴールが見える場合もある。

 研究会に参加していたある企業では「2年後の無資産化」を再整備のゴールと考えていた。この企業では財務上の理由から、IT資産をリースではなく、5年償却で資産化することが決められていた。しかし、「2、3年も経てば仮想化などの技術は大きく進歩するため、現在使用している技術は陳腐化してしまう」。

 そこで、システム全体を無資産化して、ITをフルアウトソースすることをゴールに見据えたロードマップを描いている。具体的には、サーバーの部品延長保守が切れるものから段階的にアウトソースしていくとのことであった。システムライフサイクル上の大きなイベントを、フルアウトソースという最終ゴールのマイルストーンにしているのである。

今回は、「IT基盤再整備」におけるスコープという視点で議論を深めましたが、最終回となる次回では、全5回の研究会の成果をもって「IT基盤のロードマップのつくり方」というアウトプットが出来上がるようにしたいと思います。

(文責:株式会社ナレッジサイン 森 天都平)

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