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ナレッジワークショップ議事録
日立ソフト主催 ディスカッション形式ワークショップ
「リスクorメリット? 仮想化する理由、仮想化しない理由
」後編
日時 2008年2月1日 東京開催
2008年2月5日 名古屋開催
2008年2月6日 大阪開催
主催 日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社
ファシリテーター 株式会社ナレッジサイン 吉岡英幸
参加者
サーバ統合などの目的で仮想化システムの導入を真剣に検討しているエンドユーザ企業様15社

本ワークショップでは、実際に自社のシステムに仮想化を導入している企業、また、今後仮想化システムの導入を具体的に検討している企業15社に、東京・名古屋・大阪の3会場にお集まりいただき、各社が仮想化に何を期待しているのか、どのような考え方で仮想化を導入しているのか、導入現場の実際について語っていただきました。本レポートは前後編の後編です。
仮想化に関するワークショップの第2弾を6月に開催決定(詳しくはこちら)


◆サポートへの不安

 しかし、いざ障害が起こったときに、どこも保証をしてくれないという問題が残る。

 現在、ミドルウェアやアプリケーションを、仮想化ソフトの上で稼動させることについて動作保証するソフトウェアベンダーはほとんどいない。マシンベンダーも、自社以外から購入した仮想化ソフトを載せることへのサポートは及び腰だ。障害のリスクはユーザーが担う構造になっている。

 ユーザーが実際の導入の現場で安定稼動を検証している例が多いにも関わらず、ベンダー側のサポート体制がついていっていないのが現状だ。

 その背景として、ベンダー側にとっても技術面で一抹の不安は残るのであろうが、むしろ政策的な意味合いが強いのかもしれない。仮想化ソフトに対応したライセンス体系をどうとっていくか。あるいは仮想化ソフト市場の勢力図がどうなっていくのか、それを見極めながら、どの仮想化ソフトへの対応に力を入れるべきか、慎重に立ち位置を計ろうしているように感じられる。

 いずれにしても、ベンダー側の今ひとつ二の足を踏んだような姿勢が、先進的にリスクをとって新しい技術の恩恵を享受しようとするドラスティックな企業以外に、仮想化への対応を躊躇させている要因でもあるのは事実だ。

◆仮想化導入の考え方
 そのような中、仮想化を実際に導入している企業はどのような考え方で取り組んでいるのだろうか。今回のワークショップでは、慎重派と積極派に、そのスタンスは大きく分かれていたようだ。 
 
 マシンベンダー、ソフトウェアベンダーのサポートを受けられない限り、一部の開発環境などを越えて仮想化の対象を広げることはしない企業と、積極的にリスクコントロールしながら、基幹系のシステムまで仮想化への領域を拡大していこうとする企業がある。

 それは、企業の業態やリスクへの考え方によって異なる。システムのインフラに関わるコストの増大をリスクと考え、積極的な合理化を図ることを重視するか、システムが少しでも止まってしまうことをリスクと考え、冗長化するインフラ環境を構成してでも、システムの信頼性、可用性を担保することを重視するか。

 何台もあるサーバの1台が壊れてもなんとかなる、とある意味大胆に取り組んでいる企業もあれば、先に紹介した企業の例のように、システムの稼働率レベルを段階的に分類し、それに応じて可用性のレベルも定義し、問題の少ないものを仮想化の対象にする、という企業もあった。

 ただ、積極的な企業の多くも、積極的なWebサーバや開発環境など、止まってしまってもあまり業務の影響の少ないもの、また、他のサーバでリカバリーできるもの、あるいはCPUリソースを多く消費しないものなど、「仮想化しても大丈夫なもの」の領域を定義し、そのような領域のシステムをある意味“かき集めて”仮想化対象領域を拡大しようとしているようだ。

 そもそも、社内の業務システムの中には、何年も稼動しているが、既にマシンの保守の切れたものなど、サポートを受けられないリスクにさらされているシステムが多いものだ。そのようなシステムをかき集めるだけでも、仮想化対象にできるシステムは多くなるというのが、ワークショップに参加された仮想化導入企業の多くの意見であった。

 また、ワークショップでは、ディザスタ対策で仮想化システムを検討している企業の例が紹介された。本番環境は物理的なマシンに置き、ディザスタサイトを仮想環境で構築する。ディザスタサイトの環境に完璧を求めなければ、同じ物理台数のマシンをディザスタサイトにも置かずに済み、投資を軽減できる。

 このように、さまざまな目的で積極的に仮想化環境を評価しながら導入していこうとする企業は多い。 
◆デスクトップの仮想化
「仮想化」という仕組みはサーバの統合だけではなく、所謂シンクライアントでもそのメリットが発揮される。

 
ワークショップで紹介されたある企業の例では、システムの開発において、仮想化された環境に自社の開発環境を置き、開発会社に常駐させることなく、リモートで開発環境にアクセスさせ、持ち帰りで開発をさせていた。

 自社に常駐させて開発させる場合、入館証の発行手続き、レンタルPCの手配、インストールなどで開発人員が開発に着手できるまで2〜3週間ほどかかる。一方、持ち帰りで開発させる場合、ソースや設計ドキュメントを社外に持ち出すリスクが生じる。しかし、デスクトップ環境を仮想化したシンクライアント端末を開発会社に配布することで、面倒な手続きなしに開発の体制を立ち上げられる。これを中国などでのオフショア開発に応用していくことにもなる。
◆仮想化をとりまく環境
仮想化は、今後のシステムインフラ管理においては必須の方法論と言えるであろう。仮想化が本格的に導入され、一般的なシステムインフラの拡張方法となるには、2つの成熟化が求められるだろう。

 1つは技術の成熟化である。仮想化ソフトそのものの安定性、ハードとの相性や、ゲストOS上にのるミドルウェア、アプリケーションとの相性。

 実際の仮想化ソフトは次々にバージョンアップされ、1年前のバージョンと現在では性能に格段の差が出るほど日々進歩している。また、仮想化を扱うハードベンダーやSIerなども確実に技術を蓄積してきている。多くの企業で対象を限定しながらも、仮想化の導入が確実に広がっているのが、技術の成熟化を反映しているだろう。

 もう1つは市場の成熟化である。仮想化を実現する仮想化ソフトそのものはVMwareに代表されるように、成熟した技術を持つソフトウェアメーカーがすでに多数存在する。オープンソースであるXenSourceを買収したCitrixや、Xenと互換性を持つことになるマイクロソフトHyper-Vなどの今後も非常に注目される。このように仮想化ソフトそのものの市場は着実に成長し、プレイヤーの顔ぶれも充実してきている。

 一方、ミドルウェアベンダー、アプリケーションベンダーの出方が注目される。仮想化ソフトのうえで正式にサポートをするようになるのか。ライセンスに関しては仮想環境向けのライセンス体系を打ち出してきているミドルウェアベンダーも出てきている。

 いずれ仮想化は技術的なスタンダードになるであろう。しかし、そのためには仮想化市場を取り巻くプレイヤーが、責任を持ったサービス提供体制を築くことが重要だ。今現在は技術の成熟化に市場の成熟化が少し遅れをとっているように感じる。この遅れはそのままユーザー企業のリスクというコストに転嫁される。ユーザー企業が安心して仮想化に乗り出すためには、市場の成熟が急がれる。
◆SIerに求められること
「仮想化」が市場的に過渡期にあるとすると、「仮想化」の信頼性を担保するのはやはり技術であろう。その際に、大きな役割が求められるのがSIerである。ハードやソフトのメーカーでない限り保証はできない。しかし、保証されないシステムに対して、ユーザーに技術的な安心を与えられるのは構築・運用を担当するSIerになる。

 現在も、仮想化構築に取り組むSIerの中には、論理から物理に戻す環境を用意しておき、再現テストをすぐにできるような体制を準備して仮想環境を稼動させるなど、仮想化のさまざまな環境を設定して、自ら運用と検証を重ねていくことで、顧客に対する安心を提供しているところがある。

 本ワークショップでも、仮想化の導入において、企業の環境に応じてさまざまなケースが見られた。仮想化ソフトへの性能評価、それぞれの仮想化導入への考え方、実運用におけるウィルス対策、バックアップ、それら一つ一つのナレッジを積み上げることが、仮想化を安定して運用することにつながる。

 そのナレッジの中心にあるSIerが仮想化普及の原動力となるのかもしれない。
(文責:株式会社ナレッジサイン 吉岡 英幸)

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